偏愛家リリィ

零:リリィの世界



『 恋 』


 この一言で胸踊らせられる人なんて

 きっと世界で見れば一握りだ。


 恋といえばそう。例えば少女漫画のように

 転校生に一目惚れだとか。

 何十年ぶりの再開から恋に落ちるだとか。



 彼女はそんな事を言いたいんじゃない。



 寧ろ彼女 リリィ はその手のものが嫌いだ

 夢物語に恋する方が馬鹿だと吐き捨てる。

 そんな夢のない少女なのだ。



 実際、誰もみな恋なんて同じようなもので

 学生の頃、お互いのことなんてさして

 知らないままに「好きだ」と告白して。

 考えなしに付き合ってみて。

 結局上手く続かずにさようなら。



 一体お互いが可愛い格好良いと騒ぎ、

 見せつけるようにした二人は何処に

 消えてしまうのだろう。



 …なんて思ってしまうほど儚く。

 幼稚な所から始まっていくのだ。



 それから大人になるにつれて、

 金銭面やら、家庭面やら。そんな裏の裏を

 鑑みて打算的に付き合うようになる。



 楽しさだけを求めるだけで良い恋愛なんて

 きっと成人する前にゴミ箱に捨てられる。



 あぁ、勿論。特別な例もある事だろう。



 彼女、リリィこそ。

 その最たる例なのだから。



 __...「“ 普通 ”なんてあんまりなのよ。」

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