白銀の騎士と狂気の魔学者

和邇田ミロー

プロローグ

 胸を中心に、全身に激痛が走る。

 頭も割れるように痛いし、目から流れ落ちる涙も止まらない。

 一度は止まった心臓を、見えない手が掴んで強引に動かしている。

 この命は、あと十数秒しか持たないだろう。その前に、敵を倒す。

 それだけが、私の短い人生の意味の全てで構わない。

「プリモディウス……!」

 愛機の名を呼ぶ。

「我らの命を一つに!」

 叫び、操作把を握り締めると、コクピットを囲むフレームが光を帯びる。同時に、愛機の感覚と重なって知覚されていた自分の体が、溶けて愛機と融合した。


 今、私は、プリモディウスの十八ヤグルの巨体で闘技場に立っている。

 目の前には白い敵機械ゴーレムの姿。傷つき、立ち上がろうともがいている。

 だが、もう二度と立ち上がらせない。打ち倒し、引き裂き、焼き尽くし、殺す。殺す。殺す。

 私は背の羽を開き、爪と牙をむき出し、尾を地に叩きつける。

 意識の最後に口からほとばしったのは、もう人の言葉ではなかった。


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