彼は自称死神
@nananM
第1話
今年の春、私、
中学の時からずっと憧れていた
その高校は制服がとても可愛く、近辺の高校で唯一女子もネクタイの高校。
まるでテレビの学園ドラマに出てきそうな制服でそれを目当てに入学希望する人も少なくない。
新年度の門出を祝うかのように舞う桜並木を坂の上から見下ろす。
「桜木さーん」
早く学校に行かなきゃ。入学式早々に遅刻なんて変な注目浴びたくないから。
「桜木さーん」
私を呼ぶ声がする。私はそっと後ろを振り返った。
「桜木さん、起きてください。朝ですよー」
落ち着きのある少しくぐもった声をした看護師の佐藤さんによって開けられたカーテンから朝日が差し込む。
ベッドの横の机に置かれたデジタル時計は午前7時半過ぎを示している。
「夢、か…」
やけにリアルな夢だったなぁ。今、あんな夢を見せるなんて、神様の嫌がらせかな?
今年の春、私は高校生になった。けどそれと同時に私は入院した。
もともと心臓が弱く、発作が起こるたびに入退院を繰り返していた。
しかし、よりにもよって入学式前日に発作が出てしまい入院するハメに。高校生活初日は病室で過ごすことになってしまった。
窓から見える桜並木は夢で見たのと同じように満開をむかえ、みんなの門出を華やかに祝っていた。
私が今日行くはずだった神咲高校の制服に身を包んだ女の子達の楽しそうな声が嫌でも耳につく。
「羨ましい…」
ため息混じりに漏れた言葉は誰にも拾われることなく、静かに宙へと消えていった。
病院食を食べ、検査を受け、後は本を読んで暇を潰す。入院する度に繰り返すこのルーティンにも飽きた。
昨夜お母さんの持ってきてくれた本や雑誌を読み終える頃には空はオレンジ色に染まり、日が傾き始めていた。
少し体を動かして気分転換をしようと思い、病室を出た。あまり遠くへ行くわけにもいかず、病室を出て、廊下の突き当りのオープンスペースと呼ばれている所に行った。
椅子に座ってぼーっと外を眺める。
今度はいつ退院できるかな?入学式休んじゃって学校のみんなから変な子って思われてないかな?途中から行っても友達になってくれるかな?
入院することなんて今までに何度もあったのに入学式と被った、というだけで不安かどんどん増していき、私の心を押しつぶそうとしてくる。
「何見てんだ?」
「っ!?」
突然目の前に知らない顔が現れ、危うく椅子から滑り落ちるとこだった。肘置きにしがみつき体を椅子に固定させる。
黒髪、黒目に黒の服装と全身を黒で包んだ彼が不思議そうに私の顔を覗き込んでいる。
「だ、誰…?」
バクバクとうるさい心臓に手を当て、目を丸くして声を絞り出す。
すると彼はパーカーのポケットに両手を突っ込み、ニヤリと笑った。
「死神」
「………は?」
自称死神の彼との出会いは突拍子なくて、第一印象はヤバい人だった。
彼は自称死神 @nananM
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