宝華

金谷さとる

宝石の森

 宝石のようにキラキラしい木々。

 人は環境に慣れるものなのだと少女は思う。

 木の根の洞は暖かく過ごしやすく。木々の果実は喉を潤し、空腹を消した。

 目覚めたその時、少女はすでに森の中にいた。

 帰りたくなかった少女は自分が死んだのだと思ってしばらく木々を見上げ過ごした。

 どのくらい過ぎたのか、少女はそっと立ち上がる。

 ほとんど動かず過ごした体は不思議と軽かった。

 うっすらとある道をゆっくりと辿る。

 誰にも会わない時間が少女を歩かせた。


 死後の世界が孤独なのはわたしが悪い子だったから?


 少女の呟きは森に消える。

 頭の上にポトリと青い花が落ちる。

 見上げる少女の目に花吹雪。

 死後の森は美しくひとり孤独。



 帰りたいの。

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