SEASON

結城りん

プロローグ

「暑い、、、」


 最近、暑い日が続いている。

 夏にしても暑すぎるだろう。朝のニュースでは歴史的猛暑として、ここ何日も続けてこの暑さに関する内容を報道していた。

 1週間ほど前からだ。それまでは例年通りの、普通の暑さだった。


 屋上で空を眺めていた俺は、あまりの暑さに耐え切れず教室へ向かった。




「あれ、直樹珍しいね、いつも昼休みは屋上でおねんねなのに。」

「おねんねって言い方はやめろよ、茜」

「はいはい。暑さに耐えられなかったんでしょう?」

「あぁ、もうなんなんだよ、最近の天気は」

「ほんと、とんでもない暑さだと思えば、突然雨は降り出すし、夜なんて風がひどくなる時もある、、、困ったわよ」


 そう言って、窓の外を睨むように見上げる、幼馴染の七崎 茜。しっかりした性格で、女子から慕われていて、学級委員長を務めている。俺も幼い頃から、色々と世話になっていた。



 明日から夏休み。

 毎年夏休みが近づくにつれ、友人たちや、恋人との予定の話題でいっぱいになるが、今年はそうはいかなかった。1週間ほど前から続く異常気象は猛暑だけでなく、突然の豪雨なども引き起こした。天気予報もあてにならず、毎年行われていた地域の祭り(雨の場合は中止になる)は前もって中止。外出は危険になるだろうと予想され、学校からも天候を見て、外出は控えるようにと注意があった。あまり有意義な予定を立てることができず、ただ待つ長い休日と大量であろう課題がやってくるのを淡々と待っているばかりだった。


「今年の夏休みは、あんまり期待できそうじゃないな」

「そうね。まあ、家で課題をやって、予習復習して、テレビを見て、、新しい趣味でも見つけるにはいいんじゃない?」

「趣味か、、そうだな。それがいいや」


 


 

 午後の授業で受け取った大量の課題を持ち、重い足取りで帰路へ向かった。


「ったく、暑いなぁ、、」

 焦がすように降り注ぐ日光は、じりじりと皮膚が焼けていくのが感じられるほどだった。

「雨でも降ってくれたほうが、まだましだな、、なんて」

 雨が降ったらこの日照りはなくなる、だがそれもいいものではないな。そう思った時、タイミングを見計らったように突然雨が降ってきた。

「おいっ、まじかよ」

 雨は一気に激しくなってきた。軽くあたりを見回すが、雨宿りできそうなない。走って家まで帰るにもまだ距離がありすぎる。

「うっわ、びっしょびしょじゃねーかよ、、あっあそこなら」

 家と家の間で屋根が重なり、丁度雨が当たらない細い路地があった。すぐにそこに飛び込んだ。


「はぁ、、あぁ、乾くか?これ、、ん?」

 路地の奥に、誰がうずくまってる?


 恐る恐る近づいていくと、髪の長い女の子が泣いているようだ。


 声、かけたほうがいいよな、、


「あの、大丈夫?」


 振り向いた少女の眼は、喜びと驚きが混じったようだった。


 そして彼女はこう言ったのだ。




「あなた、私が見えるの?」



 

 ここから、俺達の物語が始まる

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