ある日気がつけば彼女は死んでいたのだという。


深い悲しみにも苦しみにも触れぬうちに


死が


そっと彼女を摘み取った。


私は彼女と砂浜で出会った。


まだいとけない横顔と重たげな黒いまなざし。


「どうしてここをさまようのか」と尋ねると、


彼女は言った。


「死は暗闇。わたしは海へ来たかった。死んだら海の向こうへ行けるものと思っていたけれど、暗い竪穴を滑り落ちねばならなかった。だから私はここに来た」


死してなお輝く波間を望むことは叶わぬから、彼女は終わりなき道を選んだ。


そうしてだんだんと透き通っていくのだという。

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