子どもの情景

ほんとうはあまり声をたてて笑うほうじゃないし


いやなことばかり考えてしまう


小学生のころ、教師にかかされた恥もぜんぶおぼえてる


先生にたのまれて書いた学芸会の脚本、ことわりもなくすてられた


いきどおりにふるえても


はたして自分自身でさえ、こんなわたしのためにおこってやる義理があるのかがわからない


わたしはわたしがきらいなのに


いつもわたしのことばかり考えてしまう


パパはわたしのピアノを捨てるっていってるの


あの家で新しいおくさんと暮らすためにじゃまなんですって


じゃまなのはほんとうにピアノだけではないって知ってるの


わたし、すこしも大人になれないの


だからいやなことをがまんするぐらいなら死んだほうがまし


ひとりで死ねってみんな言うわ


でも、みんなと同じところで死ぬのはいやだから


ひとりの海を探そう


心置きなく溺れることができるように


誰もわたしの涙を拭えぬように


ひとつだけ詩を残そう


あなたの苦しみを知っていたなんて


誰にも言わせないために

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