異能はびこる世界にて

北見 柊吾

人生の終わり

 僕はもう死ぬんだろう。

 周りを見渡せばそんな事は一目瞭然だった。前回とは比にならない程の自衛隊と機動隊の数。戦車までも数台見える。生憎、武器を持たない僕の攻撃手段は体当たりしかない。なんて不自由な能力だろう。恵まれたはずの能力をまた僕は強く恨んでみる。社会からは忌み嫌われて耐え切れずに両親は自殺する。身体は硬質化出来ようとも、数々の言葉の暴力は僕の心へと不様なまでに突き刺さる。おまけに硬質化を緩めればそれまでの痛みは半減されているぐらいで、ちゃんとダメージは喰らう。

 誰もわかってくれやしない。分かりやしない。もう、安直に分かってほしくもない。

 自然と溢れた数滴のしずくを僕は綺麗に跡形なく拭きとった。

 お父さん、お母さん。こんな僕でも本当によかったのかな?

二人の記憶は小さい頃の分しかないけれど。

 もうすぐ、逢える。そう思うと気持ちがぐっと晴れた。

「青年、抵抗せずに手を上げて仰向けに寝なさい」

 スピーカーから響き渡る声を僕は無視し続けることにした。

 沖縄の空はからりと晴れている。もう迷うことはないのかもしれない。しゃがみこんでいた僕はゆっくりと立ち上がった。周りの武装した大人達は二、三歩後ずさる。

 今までずっと夢に描き溜めてきた理想という名の空想を拭い去る。

 能力も先程の乱射を耐えるのに使ってしまったし、もう頑張っても人より少し硬い程度だ。せめて最後は.....

 空では太陽が煌めいている。

 よし。

 終わりにしよう。

 少し前傾姿勢になる。

「青年、これは命令だ。動くな近付くな。近付いたら一斉に発砲する」

 空にはもう雲一つない。自然と顔からは笑みがこぼれた。

 僕は思い切り左足を踏み切って前に向かってスタートを切った。

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