第23期
1
元上司が居なくなったので公園のトイレに移動し、ポーチから…以下略で別荘へと影移動する。
「…ただいまー」
おそらく子供達は学校に出てるだろうと予想して普通に玄関からドアを開けて挨拶しながら入った。
「…あら、おかえりなさいませ」
「…ああ、うん…子供達は居る?」
「いえ、ナノちゃん達もさきほど遊びに出てしまいました」
掃除中にも関わらず、俺を見ると中断して頭を下げながら挨拶をするメイドに気まずいような思いをしつつ聞くと…
どうやら都合よく出払っているらしい。
「そう?じゃあ丁度良いな…珍しいモンが手に入ったらしいから食堂にみんな集めてくれる?」
「らしい…?分かりました、直ぐにお呼びしますね…食堂に集合」
食堂に向かって歩きながら言うとメイドの一人は不思議そうに首を傾げたが、直ぐに頷いて首にかけているネックレスを手に取って声をかける。
…独り言かと思ったが…よく見たら超小型無線機っぽいな。
「…あら?おかえりなさいませ」
「…あ、おかえりなさいませ」
「…あら…おかえりなさいませ」
「…ああ、うん…」
食堂に入ると直ぐに後ろからメイド達がやって来て、俺に笑顔で挨拶をして頭を下げた。
「…あ…おかえりなさいませ」
「…あ、おかえりなさいませ」
「…あら、おかえりなさいませ」
…俺が小箱から紙袋を取り出してると残りの三人のメイドがやって来て、やはりみんな同じように笑顔で挨拶をして同じように頭を下げる。
「…何があったんですか?食堂に集合なんて…」
「コレ、なんか珍しい茶葉だって聞いから」
「……っ…!?コレは…!」
「大富豪でも、皇族でも入手が困難だと言われてる幻の紅茶…ファースト・テスル…!?」
メイドの一人に問いかけられたので紙袋から瓶を取り出してテーブルに置きながら言うと…
メイド達は瓶を手に取り、ラベルを見て驚き出した。
「どこでコレを!?」
「ソレに、これほど大量に…!?」
「まあそこらへんは後からアレするから分かると思うし…とりあえず試飲してみねぇ?」
「そ、そうですね…!死ぬ前に一度は飲んでみたいと言われる幻の紅茶ですから…ぜひ」
興奮した様子で聞いてくるメイド二人を軽く流してそう言うと、現メイド長であろうメイドの一人が賛成し全員で厨房へ。
「…コレは何℃かしら…?」「抽出方法はいつもどおり…?」「…幻の紅茶の最適な淹れ方は…」「とりあえず経験則や勘に任せてみましょう」「ポットの温度もいつもどおりでいい?」「茶葉はコレくらいで大丈夫…?」「カップは…」
「「「「「「「今!!」」」」」」」
珍しくメイド達がザワザワと落ち着かない様子で準備を進め…
俺の直勘が反応すると同時にメイド達が声を揃え、近くにいたメイドが素早い動きで火を消す。
…こんなメイド達を見るのは一体いつ振りだろう…?
いつも常に冷静で大人びた彼女達が普通の女の子になってる状態なんて、そう見ないからな…
「時間との勝負…!」
「タイミングは任せて!」
「時間を測らないと…!」
二ヶ所で沸かしたお湯を二人で同時に取り、やばいほどスムーズに他のメイド達と連携を取りながら紅茶を淹れていく。
…すっげぇ…
…まるでプログラミングされたロボットのように流れるような…一切無駄のない滑らかな動きだ…
メイド達の行動を呆然と見ている俺一人を完全に蚊帳の外にして、紅茶を淹れるっつー作業が完了。
テーブルの所まで運ぶ時間が惜しいのでそのまま厨房で飲むことに。
「…おお、香りが普通のとは全然違う…香水や芳香剤を優しくしたような…アロマとしても使えそうなぐらい柔らかい匂いだ」
「…本当ですね、この匂いにはリラックス効果が…アロマセラピーで使ってても違和感無く受け入れられそうな…」
まず最初に香りから入ると、そこらの安物とはレベルが段違い。
思った事をそのまま口にするとメイドの一人が賛同してくれる。
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