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…どれ、先ずは一口…



「…わお、すっげぇなコレ…味オンチな俺でも他との違いが直ぐに分かるわー…」


「甘みが優しいですね…ソレを引き立てるかのようにほのかな酸味…」


「それに甘みを全く邪魔せずに、むしろ違和感無く調和している渋み…」



俺が味の感想を言うと現メイド長とあと一人のメイドも感想を言い、他のメイド達も同じ意見なのか首を縦に振った。



「「…コレが幻の紅茶…」」



…そして意図せず発した俺とメイド達の言葉がハモる。



「…確かに凄いではあるな…この世界じゃ、最上位じゃね?」


「そうですね、ココで栽培してる茶葉で淹れる紅茶には負けますが…それでも幻の紅茶の名に恥じない品質だと思います」


「昔から一度は飲んでみたいと思っていましたので、私…今回飲めて、とても感動しました…」


「あ!分かります!私もです!」



私も!私も!と、メイド達のほぼ全員がメイドの一人の発言に共感したらしくハシャギながら雰囲気が盛り上がっていく。



…流石にこの別荘で育ててる茶葉と比べるのは酷かね。



なんせ魔界の魔族から貰った品種改良型だからなぁ…



魔界の超高濃度の栄養剤を希釈せずに原液で撒いてるのに収穫出来るのは5年に一度っていう…



しかも収穫量もかなり少ないから、商売するには全く持って向かない。



…その代わりその茶葉で淹れる紅茶やお茶の味はヤバイけど。



アレを飲んだら俺らみたいな味オンチじゃない限りは確実にこの世界の紅茶は飲めなくなるとか。



俺にはその感覚が分からなかったが…



なんでもソイツ曰く『美味しい自然の湧き水を飲んだあとに、ずっと泥水を飲んでるようだ…』と。



…結局、この世界で上質な紅茶やお茶を飲んでもクソマズイ泥水にしか思えねぇ!って一年経たずに自殺しちまったんだけども。



メイド達は別にその紅茶やお茶を飲んだところで、ソイツと同じ感覚にはならなかったらしいから…



そんなつまらない事で死ぬ馬鹿な奴も居るんだから人間の不思議。



グルメだの味にこだわる奴って生きづらいとか思わねぇのかな?



…まあ、ソイツらも俺みたいな味オンチを見て同じ事を思ってるかも知れねぇけど。



「…出来れば、お父様達にも飲ませてあげたいけど…」


「…ああ…ミシェナは元気かしら…」


「こんなにいっぱいあるんだから、お前らの実家にも送れば?家族分を送ったとしても一瓶使うかだろ?」



メイド達が生前の事を思い出しながら表情を曇らせて呟くので、俺はそう提案した。



「…よろしいのですか?」


「…ですが…私達は既に死した身ですので…」


「んじゃ、ほら…俺が母さんに送ったみたいに『この手紙が届いてる頃には…』的な感じで送ったら?」



メイド達は戸惑った様子を見せるので適当な感じで案を出す。



「…そうですね、生前の未練を断ち切る良い機会かもしれません」


「いや、別に断ち切らなくても…」


「その案、ありがたく使わせて貰いますね」



現メイド長であろうメイドの言葉にツッコむように言うもスルーされる。



「…まあ、未練がどうこうはお前らの問題だから置いとくとして…ソレ飲んだらいつものあの部屋に集合してくれ」



俺は一口味わった紅茶を一気飲みしてカップをシンクに置き、そう告げて先に厨房から出た。



そして鍵が大量に取り付けられたドアの前で待つ事、数分。



「お待たせしました」



おそらく洗い物を済ませてくれたんであろう最後のメイドの一人が到着したのでドアを閉める。



「んじゃ、ま…始めますか」



いくつかの内鍵を閉めてドアが開かない事を確認し、メイド達の一人の血を舐めさせて貰って血を操る能力を使い…



いつもの例のアレをした。



「…なるほど、それで幻の紅茶をこんな大量に…」


「お茶会…私達も久しぶりにやりますか?」


「そうですね、子供達も喜ぶと思いますし…」


「俺も都合がついたら参加するよ……つっても期待はしないでくれるとありがたいが」



メイド達のあと…んんっ!



…ご奉仕も終わり、部屋の外に出て施錠しながら予定を立ててるのに一応返事をして俺は別荘を後にする。

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