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「あの…逃げた、とは…?」


「町の外で待機してた奇襲部隊?的な奴らが居なくなった」


「まあ指揮官一人、後方支援のアーチャー二人じゃ攻めるには分が悪いよね」



逃げるのもしょうがない…と、ショコラは敵が何故居なくなったのかを兵士に分かりやすく説明する。



「なるほど…と言う事は…お二人で奇襲部隊を撃退した形になるんですね!」


「…ま、そういう事だな…つーワケでもう町の外に出るから見送りは大丈夫だ」


「それよりもあっちを手伝って来たら?」



兵士の解釈に否定せず追い返すように返すとショコラもソレに乗っかった。



「分かりました…護衛を任されたのに逆に護衛されてしまったのは情けない限りです、申し訳ありません…ではお気をつけて!」


「あ、うん」



兵士が良く分からない挨拶をして敬礼するのでシカトすると、ショコラは適当ではあるがちゃんと返してあげる…っつー優しさを見せる。



…そんなこんなで兵士は走り去って行くので俺らは街道から外れた場所へと移動した。



「さて、仕事も終わったし戻るとす…」



草木が生い茂る林の中へと入り、ポーチから折りたたみナイフを取り出して言いかけると俺のスーパーな直勘が反応する。



「?どうしたの?」


「…この先で女の子が危険な目にあってる…ような気がする、確認してくるからちょっと待っててくれ」


「あ!」



ショコラの不思議そうな問いに曖昧に答えるや否や俺は奥へと駆け出す。



「…本当に?魔物や人の気配も何も感じないけど」


「何も無ければソレに越した事はねーよ、つーか無駄足だった時のために待ってろって言ったのに…勝手について来たんだから後で文句言うなよ」



わざわざ後ろから追いかけて来たショコラがそう聞いて来たのでため息混じりに返し、後の展開を見据えて釘を刺した。



「えー?あんな蚊とか虫とかいっぱい出そうな所に女の子を待たせてたら文句言われるのも当然でしょ?」


「…そりゃそうだ、じゃあ街道で待っとけば?」



ショコラの反論が正論なので非を認め、ちょっと改善して提案する。




「どうせていとと一緒にいれば直ぐに帰れるんだから、無駄足でも暇潰しだと思うから大丈夫」


「…せっかくのデートが山登りや森林浴じゃなくてこんな雑木林でのランニングになってすまんとは思う」


「あはは!デートかぁ…でもこの状況って昔の養成学校時代の訓練を思い出さない?」



どうやらショコラはポジティブな考えに変換してくれるみたいなので冗談混じりに返すと、懐かしむように聞いてきた。



「行軍の一環としてやったな、そういや…」


「痕跡を辿ったり、痕跡を残したり、痕跡を消したり、痕跡を残さないようにしたり…」


「戦闘に特化させてる兵士に本職のレンジャーでさえ敵わないような技術を身につけるってどうよ…っと、そろそろだ」



思い出話に疑問を呈しつつも進むと気配を感じられるようになってきたので、ショコラに教えるように告げる。



「…わ、本当に女の子がピンチだ」


「…格好を見る限りでは冒険者か…?周りのアレは魔獣だな」



少し進んだ所で魔獣数匹に扇状みたいな感じで囲まれてる女の子の姿が見えた。



「…ソールラース…えいっ」



ショコラが詠唱破棄で土魔術を発動させると俺らの近くの地面が複数箇所、細長く盛り上がり…



150cmほどの土の槍が数本同時に出来たかと思えばソレらが宙に浮き、ショコラが手首を動かすと全てが魔獣に向かって飛んで行く。



…結果、その全てが女の子を囲っていた…囲おうとしていた?魔獣達を貫いて倒す。



…ええー、俺が行こうとしたのにまた先手を取られちまったよ…



つーか魔術での攻撃が便利過ぎて俺の出番が全く無いっていう悲しさ。



…まあショコラぐらい魔術を極めてるからこそ出来る芸当、だけどな。



普通のやつだったら同じ事しようとしてもかなり時間がかかるハズ。



そもそも普通の魔術師なら無詠唱や詠唱破棄で出来るレベルじゃないと思う。



…あたしゃにゃあ無理だな…一応魔術的に同じ事は出来る。



無詠唱や詠唱破棄で同じ威力も出せる、けども…同じ早さでは出来ない。

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