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「…むー…確かに私には関係の無い事だけど…」


「まあもし万が一の確率でお前が性犯罪にでも巻き込まれたら俺が居るから安心しろよ」



相手がレズっ娘や百合っ娘じゃない限りは助けてやるから…と流すように言って俺はまた紙に目を向けた。



「えー、相手が女でも助けてよ」


「そういやリザリーの万が一の時は女だったっけ…なんか色んな道具持ってたハズ」


「…あー、そういや拉致られた事があったねぇ…同業者だっけ?」



ショコラが不満そうに言うけども紙から目を離さずにそう返すと思い出すように聞いてくる。



「知らね、ただ…俺が昔作った薬を使ってたな…どこで手に入れたかは知らないが」


「ぎくぅ…ソレ、多分私達が研究材料として流したヤツだ…」


「…だったら自業自得じゃねぇか…」



適当に返して俺も思い出すように告げるとショコラが擬音を言葉にして呟き、普通に心当たりを話した。



…まあ良く考えたら昔は俺が死んだと思ってたんだから、差し当たりの無いヤツは他に流すわな。



「…でも女が女を対象に性犯罪を起こす、ってのも珍しくない?」


「男だって男を対象に性犯罪を起こすだろうが…まあ珍しいが」


「…やっぱりそういう時の自衛のためにコレを一般に流した方がいいかなぁ…」



ショコラは話の流れで何かを思いついたのか強化外骨格スーツ『ver.3rd』を手に呟く。



「止めとけ止めとけ、男に盗まれたりでもしたら逆効果だぞ」


「…だよね…お金で売ったり、貢いだりしそうな女も出てきそうだもん」



ショコラのアイディアを否定すると普通に受け入れて最悪の事態を想定する。



「女の敵は女…だなんて上手い言葉だよなー」


「じゃあ男の敵は?男?」


「ま、そうなる時もあるだろ…女よかそうなるケースは少ないけど」



…男の敵が男の場合って良く考えたらパッとは思いつかない…



女の敵は女の場合はすぐに例えが出てくるのに。



「…うーん、世の中周りは敵だらけだなー…」


「…俺だってお前らを性的に見てたり、利用しようとしたりするんだから見方によっては敵にもなるな」


「ソレを言うなら私だってムラムラしてたら性的な目で見ちゃうから敵になっちゃうよ?」



ちょっと悲しそうな感じで呟いたショコラにそう返すと予想外の言葉が。



…え、女でも男を性的な目で見る事とかあんの…?



そんなん大人の漫画とか動画だけだと思ってたのに…



…ってか良く考えたら俺は何回もこいつらに襲われかけてんだからありえない事ではないか。



「声かけて直ぐにヤれる女を敵だと思う男はいないんじゃねぇの?ソレを脅しの材料にして貶めるとかならまだしも」


「いやいや、男なら誰でも良いってワケじゃないから…ってかソレただの股の緩いビッチじゃん」


「…俺の言い方が悪かった、勘違いさせてすまん…お前の事じゃなくて女性全般がそうだったら…の仮定の話だ」



ショコラの返事に俺が思ってた事と違う受け取り方をされてしまっていたので、言葉だけで謝って言い訳をした。



「うわー、ていとが私の事をそういう風に見てたなんて…ショックだなー」


「…ココは更に謝るべきか?言い訳するべきか?」



全くそう思ってないくせに俺をいじるかのように、いかにもな言い方をしてくるので選択肢を挙げる。



「んーと…じゃあ言い訳で」


「…そりゃお前らは彼氏を取っ替え引っ替えしてんだから、そういう目でも見てもしょうがなくね?」



ショコラが面倒な方を選ぶので一旦手を止めてから言い訳をした。



「おお、そうくるかぁ……でもソレって偏見じゃん」



少し驚いたように呟くとちょっと考えたような間が空いてから否定するような感じで返す。



「いやいや、短期間で彼氏をコロコロ変える奴を清楚とか身持ちが堅いとかガードが固いとか思わねーだろ」


「ぅ…確かに…で、でも、もしかしたらヤる前に別れてるかもしれないでしょ?」



ショコラの言葉を更に否定するように言うと劣勢になってる事を自覚してるかのように呟いて、可能性の一つを話した。



「…お前が『もしかしたら』って言ってる通り、確率低くね?」


「ぬぬぬ…!…何も言い返せない…や、やっぱり謝るやつ!」


「すまん」



俺に論破されたからか悔しそうに唸ったあとに選択肢を変えたのでサラッと謝る。



「分かればいいのだよ、はっはっは」


「…何キャラだよ」



ショコラが急に意味不明なキャラで上から目線な感じで笑ったので思わずツッコむ。



…ちなみに、ずっとお互いに顔を合わせてない状態で話してるよ?



俺は紙を見て書きながら喋ってるし、ショコラはなんか『ver.3rd』とか金属防具一式もどきを触りながら喋ってるし。

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