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「…まあ喧嘩を売ってる気もする気も無いが、共存するならお互いが妥協しないといけないと思うんだが」


「…なにそれ?逆に女が自分勝手だ、って言いたいの?」


「男の大多数は犯罪をしないように理性を保って我慢しながら生きてるワケだ、なら…女はなにを我慢してる?」



前置きをして話したにも関わらず喧嘩腰で食ってかかってくるショコラを気にせずに質問した。



「女だって我慢してるんだからね!男よりも大変なんだよ?」


「んじゃ、具体的にはなにを?」


「そりゃ………私はセクハラとか気にしないし、痴漢にも合わないし、性犯罪に巻き込まれる事が無いから分からないけど…でも!女がこの世の中を生きるって大変らしいよ!」



若干キれかけたように言い返すショコラに冷静に聞き返すと、徐々に声が小さくなるも最後らへんで声のボリュームを上げる。



「…答えになってないぞ」


「ぅ…確かに、私は我慢してないかもしれないけど…」



俺のツッコミにショコラは気まずそうに呟く。



「生きるのが大変なのは分かる、男よりも身だしなみとかを気にしないといけないからな…」


「でしょ!?」


「だがそれとこれとは別だ、生きるのが大変なのは男女問わずだし…で?女は理性を保つほどの、何を我慢してると思う?」



俺が賛同すると嬉しそうに相槌を打ってくるが、ソレは本題とは違うのでもう一度本題に戻してから問う。



「…男のデリカシーの無さとか、発言や行動を見ててイライラするとか…」


「ソレは男だって女にそうなる時もあるだろ…俺が今聞いてるのは、男が性犯罪を起こさないために理性を保ち本能を抑えて我慢してる…的なのを女がしてるかどうか、だ」


「え、ソレは女に勝手に欲情する男が悪いんじゃないの?」


「…女が男を欲情させる格好をしててもか?」



的外れな事を言い出したショコラに俺の質問の意味を話したらキョトンとした反応をされてしまったので、呆れたように聞き返した。



「その理屈はおかしくない?痴漢なんて露出してる派手なギャルよりも、むしろ地味な格好の女の子が狙われるって話だよ?」


「…お前、俺の話を半分流してるだろ…」



どっから聞いてたのか分からない話をして論破を図ってくるので、俺はため息しか出ない。



「え、だってそういう事でしょ?」


「…男は女らしい格好を見るだけで欲情するかもしれないんだぞ?」



地味だろうが派手だろうが女らしかったら美味しい食事にしか見えねぇんだよ、と良くわかってないショコラに説明する。



「だったらどんな格好をすればいいの?ノーメイクで丸坊主で、マスク付けて作業着でも着てればいいの?」


「…かなり極端な例だが、そんな格好してる女に痴漢する男はまず居ないだろうな」



そもそも女だと認識できるかも怪しいから、性犯罪対策としては効果抜群だろうよ。



単純な疑問…といった様子でアホみたいな例を出してきたので一応は効果的だと返した。



「…でもそこまでする必要なくない?勝手に欲情してる男が我慢すれば良いだけじゃん、逆になんで女が男のためにそんな事までしなくちゃいけないんだか…」


「…男のため、じゃなくて自分の身を守るため…だけどな」



勘違いしながら不愉快そうな感じでため息混じりに呟くので、ちょっと修正する。



「じゃあ法律を強化してもっと厳罰化すれば?」


「そうなりゃ男と女は共存できねぇだろ、一方に我慢を押し付けるなんて独裁者じゃねぇんだから…」


「えー?でも男が悪いんだからしょうがないじゃん」


「…男と女の戦争に持って行くつもりか?…まあお前らぐらい強い女には性犯罪の自衛なんて関係の無いことだけど」



だんだん面倒になってきたので、ソレを言っちゃおしまいよ…的なのを自分から切り出して話題を強制的に打ち切ることに。



…男と女は違う生き物だ、ってのは良く言われる事だけど…なら余計に男よりも弱い女は襲われないように自衛策を取るべきだよね。



…男より強ければ返り討ちにすれば良いワケだし。

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