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「へぇ、あんだけ出来ない出来ない騒いでたのに…なんだかんだ作れたんだな」


「すっごい苦労したよ!主に風魔術の術式調整が」


「まあでも一つ作れたんなら残りは簡単だろ」



…胴の部分は除いてな、ってのは言わずにショコラから視線を外して書きかけの紙に意識を戻した。



「…でも、コレ…試作品だからていとのとは性能が比べるまでもなく劣…る、って何してるの?」



ショコラは自分達で作ったんであろう金属の小手を見ながら言うも途中で俺を見て不思議そうに近づいてくる。



「誰かさんが精霊達に話したモンだから、ねだられちまったんだよ」


「何を?」



俺が皮肉たっぷりで言ったのにショコラは身に覚えが無いからかキョトンとした様子で首を傾げた。



…って事はエルーかリザリーだな…どっちだ?



…まさかのマキナか?



「…お前が今持ってる金属防具一式を」


「え!?今、ソレを作ってるの!?」


予想外の反応にスカした事を少し申し訳なく思って普通に教えたらなぜか驚愕する。


「厳密には精霊用に改良するから金属防具じゃなくなると思うが」



…あいつらが人化する度に防具を着脱するのもアレだし…



あいつらじゃそもそも保管出来ないからその都度俺が小箱から取り出すのか?ってなったら超面倒だ。



だからなるべくなら魔剣に装飾品みたいに付ける形で出来ればいいんだけど…



精霊が人化したらそのままリアクター、オンでいつでもどこでも飛べたり出来るようになる…とか。



そうすりゃ手間がかなりガッツリ省けるからな。



「…精霊用?」


「人とは色々と違うからアレは使えねぇんだよ」


「…あー、確かに…人間用じゃ厳しそう」



使えない事は無いハズだが…と思いながらショコラの疑問に答えると何か納得したように呟く。



「だから、暇な時に新しく作ろうとしてんの」


「…ちぇー、人間用だったら私達の分も作って貰おうと思ったのに…」



紙から目や手を離さずに話を打ち切るように言うと残念そうに返された。



「一人分作るのにどれだけの時間と材料が必要になると思ってんだよ」


「そだねぇ…この試作品で約二ヶ月に85億とんで6000万ちょいぐらいかかったから…一人分で二週間と500億ぐらいはかかっちゃう?」


「…え?」



適当に返したら自分達の研究にかかった時間と費用を計算して予想しながら言うので、俺は思わずショコラを見る。



「ん?どしたの?」


「いや…金額が凄すぎて」



キョトンとしたようなショコラの反応に俺は苦虫を噛み潰したような顔をしたかったが…



なんとかこらえてポーカーフェースを貫き手を動かす。



「そう?確かに試作品にしてはガッツリかかったなー…とは思ったけど」


「…人間じゃない俺が言うのもなんだが、お前らの金銭感覚っておかしくね?」


「えー、でも人間が空を飛べるようになるんなら安くない?」


「…少なくとも庶民感覚の俺からしたら全く安く感じない」



ショコラのまるで度を越した金持ちのような発言に俺は若干ヒきながら返した。



…金に縛られない俺でさえまだ人間の時の金銭感覚は持ってるというのに…



人間であるこいつらが常人離れした金銭感覚ってどういうことだ?



人間としての能力が常人離れしてるから金銭感覚も常人離れしてんのか?



「ていとは庶民というかお金を必要としてないだけでしょ?」


「…ソレもある」



欲しい物は力で奪い取るからなぁ…と思いつつも心にしまいながら肯定する。



「そりゃ確かに普通の人からしたら500億は高いと思うよ?でも、戦闘にも使えて生活や仕事にも使える万能性があれば直ぐに元が取れるじゃん」


「…うーん、確かに…?」


「私は500億でも安いと思うから、作ってくれるんなら財産をすべて投げ打ってでも即金で用意するなー」



ショコラが説明するのをイマイチ納得できずに手を止めて首を傾げながら呟くと、そこまでするか…的な言葉を口にした。



…って事はアレじゃね?



あたしゃ500億以上の金銭価値がある物をタダであのド変態にあげたって事になる感じ?



…うげぇ…データ収集の協力の報酬ってだけであげるには勿体なかったかも…



これじゃあ客観視したら俺があのド変態と仲が良いって事になるじゃねぇか!



…ちくしょう………でも過ぎた事は後悔してもしょうがない。



コレはもう式使のお姉さんに新鮮さを与えるのに一役買った、とでも思えば多少は…うん。



式使のお姉さんのためだからしょうがない!って気持ちにもなるよ。



…気持ちを切り替えていこー。



それより…気になる事があるんだが。



「…お前の財産って500億もあんの?」



ショコラの財産が500億は軽く超すぐらいある、ってのも中々の衝撃だ。



…まあメイド達に預けてる俺の財産が兆を超すぐらいあるかもしれないから、ない事はないと思うんだが…



とはいえ俺は自分の貯金とか財産がいくらあるか…なんて分からねぇ。



全てメイド達に管理してもらってるからなぁ…



…もしかしたら数千億ぐらいまで減ってたりして。



「え?…どうだろ、数百億はあったけど…細かい数字までは覚えてないや」



足りなかったらマキナやリザリー達から借りられるし…と、ショコラは楽天的に話す。



「…そういやその莫大な資産だが財産も研究費に変わるんだっけ?」



今回の85億とかもポケットマネーから出て行ったのかね?



「うん、一応国からの補助金とか研究所の予算とかもあるけど…足りなかった場合は、というかていとのやつはほぼ確実に足りないから…ほとんどポケットマネー」



予算も補助金も焼け石に水だからねぇ…と俺の疑問に対してため息を吐きながら答える。



「…なんでそこまでしてやるんだよ」


「そりゃかけた予算以上の効果が期待できるから!いわば先行投資ってやつ?」


「…効果、ねぇ…」


「リターンでもいいかな?とりあえず完成した時のメリットが計り知れないから賭ける価値は無限大!」



『効果』のワードがしっくりこないので呟くと、言い換えたように首を傾げて意味不明な事を言う。

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