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「…他の世界の技術力って凄いの?」


「技術力だけで言えば魔界の魔族に教わるだけで十分だけど…色んな経験は必要だから」


「…そう言えば魔界の魔族は凄いと言ってたわね…」


「調理や戦闘に関わることだけは、な」



俺の説明にリザリーが間違って解釈しそうだったので補足をいれて修正する。



「調理?」


「食べられそうにない魔物や植物を食べられるようにする技術もあるから…調理の部類に入ると思う」


「へー…そんな技術もあるんだ」


「…テイトの話を思い出す限り魔界はかなり厳しい環境らしいからな…生存するためには技術を上げざるを得ないんだろう」



ショコラが不思議そうに聞くので俺の考えを話すと、マキナが意外そうに呟いてエルーが納得したように言う。



「…それにしても…私達が金属のアレのコピーをなんとか作れたと思ったら、今度は更に常識外の物を作ってくるなんて…」



いったい何がしたいの?と、意味不明にリザリーから敵視されてしまった。



「今回はお前らを喜ばそうと思って作ったのにえらい責められてんなー」


「謝謝!」


「メルシー!」



特に気にせずに棒読みに近い感じで皮肉を返したら…



ショコラとマキナが別の国の言葉とどっかの地方の方言で感謝の意を伝える。



「か、勘違いしないでよね!べ、別に感謝してないわけじゃないんだからね!」


「…ものっそいテンプレなツンデレなんだが…」


「嫉妬と感謝が混じっておそらく素直に言えないからテンプレのセリフを言ったんだろうな」



いかにもなどう反応すればいいのか困る事を言われてしまったのでエルーに振ると、リザリーの心境を予想して説明してくれた。



…なるほど…確かにあのセリフじゃ、たとえ本心だとしてもネタにしか思えないもんな…



一応感謝の気持ちがあるんだろうって事は伝わるし…



自分の言葉じゃないからどう思われても構わない的な、上手い逃げ道かも。



「…ソレ、今すぐ発動できるの?」


「ん?ああ、クロノスとガイアが直したからな…一回分ぐらいの魔力は補充されてるだろうよ」



ショコラの確認に俺は手に持ってるクリスタル型のモノを見ながら答える。



「なら今すぐ使えるの?」


「全く問題は無いが…こんな昼間からやる気か?さっき言ったように魔力を使ったら戻らんぞ?」


「大丈夫!」


「私も!」



マキナが期待したような目で俺を見ながら確認してくるので、後先を考えるよう促すも無駄に終わった。



「…ふぅ…しょうがない」


「待って」



本人達が構わないと言ってる以上、何も無いのに俺がとやかく言うわけにもいかず…



ため息を吐いて起動させようとしたらリザリーに制止される。



「なんだ?」


「…この二人が戦い始めたらどれくらいの時間がかかるか分からないから、タイムリミットを設けたいのだけれど」



俺の問いにリザリーはちゃんと仕事の事を考えて話を切り出す。



「ああ、心配すんな…さっきも言っただろ?別空間は時間の概念が無い、って…だから大丈夫だろ」


「「「「…は?」」」」



リザリーの心配は杞憂だと言う事を告げると…何故かみんなが、初耳だ…みたいな反応をした。



「…時間の概念が無いって…どういう事?」


「は?さっき説明したじゃん、別空間を新しく作り出すだけだから時間は無くなるって」



時空間を作り出すわけじゃなく、あくまで別世界の別空間だけしか作れない…って言ったハズだけどな…



ただの空間魔法じゃ時間には干渉できないし。



時魔法なら時間に干渉できて、時空魔法なら時間と空間どっちにも干渉できて操れるけども。



「…なにそれ?」


「そんなの言ってたっけ?」


「いや…聞いてないな」


「私も今初めて聞いたんだけど」



俺が内心考えてると4人とも聞いてない…的な、ただ聞き流してただけじゃね?と言いたくなるような様子を見せる。



「えー…言ったハズだけどなぁ…」


「時間の概念が無くなるって、具体的にはどういう事なの?」


「そのままの意味、分かりやすく伝えるならずっと時間が止まってる状態だな」


「…どういうこと?」



俺の呟きを無視してリザリーが聞いてくるので、二度目かよ…と思いながら返すとマキナが首を傾げる。



「つまり、こっちの現実世界から別空間に行ったとして…あっちで何年過ごそうが現実世界に戻って来た時には一秒も経ってない、っつー事だ」


「…まるで精神と時の部屋理論だな…」


「その例えに近いけどどうだろうな…一応生身だと老化や成長はするぞ?」



時間が止まってる、っつっても周りの時間が止まってるだけで生物の時間を止めてるワケじゃないし…と、生身での場合は現実となに一つ変わらない事を告げた。



「その話だと、思念体では例え何十年過ごしても生身の身体は老化しないってことになるわよね?」



リザリーは俺の話を聞いて何かを思いついたかのように確認してくる。

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