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「その分クオリティが桁違いだけどな」


「確かに、式神はあくまでインスタントでしかない」


「…そろそろ行きましょうかぁ」



話がひと段落ついたところで式使のお姉さんが指揮を取るかのように言い、近くに停まっていた車に乗り込む。



「今日は式神で行かねぇの?」


「黒は基本的に車移動だからな、ソレに合わせてるだけだ」


「…なるほどね」



いつもは式部が大鷲を召喚して移動するので聞いてみると…



どうやら式使のお姉さんの行動に合わせてるようなので、俺もソレに倣って車で移動する事に。



…別に車だろうが式神だろうが楽して現場に着ければいいし。



ただ乗ってるだけで現場に運んでくれる、って労力を必要としないから面倒臭がりな俺からしたらありがたいわー…



…特に話す話題もないので移動中はみんな無言。



車内はラジオが流れるだけの静かな雰囲気のまま現場へと到着する。



「ふあ~あ…面倒くせ…金属防具一式」



心なしかいつもより数が多いような雑魚妖怪の群れを見て若干憂鬱になりながら小箱から金属防具一式を取り出す。



「…えらいモノ持ってはりますねぇ…」



俺が例の小箱から物を取り出す場面をいままで見てなかったのか、式使のお姉さんは初めて見たかのように目をパチパチさせて驚きながら呟いた。



「…ああ、アレ?どっかの国の秘宝だって」


「…どこかの国の秘宝…?」



金属防具一式を着けながら適当にザックリ説明すると式使のお姉さんが不思議そうに首を傾げる。



「そうそう、どうやって手に入れたか忘れたけど」


「はあ~…外の国にはそんな不思議なモノがあるんですかぁ…」


「…外国からしたらこの国の方が不思議だと思うけどね」



隣の芝は青く見える理論的な?と、俺はなるべく分かりやすいような例を挙げて強引に納得させにかかった。



「…なるほど…」


「…とりあえず…スラスター、オン」



何に納得したのか良く分からないが、式使のお姉さんが頷いて会話が終わったので…



魔石の魔力を使って詠唱破棄で魔術を発動させる。



…さて、そろそろ最低限は戦闘向けの機動力になってないと厳しいかも。



調整に調整を重ね、改善すべき点を改善したんだから…多少は動けるようになってないと困るぞ。



「ふむ、そろそろ及第点までは改善出来たのではないか?」



手をグーパーしたり、腕を回したり、屈伸したりして動きを確かめてたら式部が発明品がどういう状況かを確認してきた。



「ソレを今から確かめるんだよ」



俺は返して直ぐに雑魚妖怪に向かって猛スピードで滑るように進んで、その勢いのままドロップキックを食らわせる。



うむ!思った通り、最初の頃に比べたら身体の動きがスムーズになってるな!



一応本来の動きには全然及ばないとはいえ…



意外と調整や改善はちゃんと出来てるから、このままいけば機動力が完璧になる日もそう遠くない!



見る人から見たらぎこちないような動きで雑魚妖怪を殴る蹴るでボコり、ある程度現段階の実戦データが取れた所で距離を取った。



「お、もうデータは取り終えたのか?」


「ああ、ほらよ」



俺が金属防具一式を外してると目敏くソレに気づいた式部が近寄ってくるので、外したパーツを渡していく。



…さて、さっきはなんとか養成ギプスでも着けられてるかのように、身体が思うように動かなくて微妙な感じになってしまったからな…



俺は首を左右に傾けて骨を鳴らし、更に指の骨も鳴らしながら歩いて雑魚妖怪との距離を詰める。



…恨みはないが、不完全燃焼感を発散させてもらおうか。



…一番近くに居た雑魚妖怪を掴んで直ぐに後ろに投げ飛ばし…殴る蹴るなどの暴行を加え、最後に『柄(仮)』でトドメを刺す。

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