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男女の友情ならばまだ性的な目で見てもしょうがない部分があったのに…!



…綺麗なものを綺麗に見えない自分が気持ち悪い。



「…程人君?聞いてる?」



どうやら俺の自己嫌悪の最中にも話してたらしく、俺が聞き逃してる事に気づいたマキナが確認を取った。



「…ごめん、死にたくなるほどの自己嫌悪に陥ってて聞いてなかった」


「死にたくなるほどの自己嫌悪?」



俺が聞き逃した事を謝るとマキナがその内容におうむ返しで聞いてくる。



「…いや、なんでもない…いつものアレだ、発作のようなもんだ…気にするな」


「…そう?私で良ければ…何か悩み事があるんならいつでも聞くよ?」


「ありがとよ、いよいよヤバイって時には相談するわ…で、個別の注文の方をもう一回頼む」



俺の落ち込みはいつもの事なので適当に誤魔化そうとしたらマキナが心配そうに親身になって聞いてくるので、お礼を言って聞き直した。



「…程人ー?」


「んあ?」



マキナの個別の注文の品をミニノートに書いてると部屋から母さんが出て来る。



「まだ電話中?」


「いや、もう終わり…じゃあまたな」


「うん、また」



母さんの問いにミニノートを閉じて返し、マキナに別れの挨拶を言って電話を切った。



「そっちは?」


「終わった、今日の仕事は終わりだからそのまま帰ろうと思うんだけど…どこか寄る所ある?」



俺が聞くと仕事が終わった事を告げ、電話を気にしてか尋ねてくる。



「いんや?別にどこも寄らねぇよ?」


「じゃあそのまま帰る?」


「そだな、帰ろう」



リザリーからの電話があるまで何も買いに行けないので疑問系で返すと、母さんに聞き返されたのでその意見に賛同した。



…さーて、家帰ったら金属防具一式と『柄(仮)』の調整だな。



買い物は時間帯的にどうせ明日になるだろうし。



プルルル…プルルル…



「電話…?」


「俺の…もしもし?」


「もしもし?テイトか?」



駐車場に向かってる最中にさっきマキナが言ったように電話がかかってくる。



…どうやら今度はエルーのようだ。



「マキナから聞いてるよ、個別の注文だろ?」


「ああ、ナターシャや兄さん達にお土産を送りたくてな…なんか美味しいものとかあるか?」



…クレインねぇ…確かアイツ見た目に寄らず食べ物大好きキャラだったよな?



…なら…たこ焼きとかお好み焼きといった冷凍食品はどうだろうか?



業務用ので大量に入ってるやつ。



レンジで温めてマヨネーズとソースをかけるだけのお手軽なの。



「うーん、たこ焼きとかお好み焼きはどうだ?小麦粉で作られてる異国独特の料理で、美味いぞ」



お勧めを聞かれたので、とりあえず外れが無いヤツをチョイスして勧めた。



「…タコ…オコノ…?」


「ほら、昔作ってやっただろ?小さくて丸いタコの切り身が入ってて、マヨネーズとソース付けて食べるあの熱いやつ」


「ああ!アレか!あの小さくて丸くて熱い!」


「たこ焼き?お好み焼き?」



エルーが聞き取れないように微妙なおうむ返しをするので、説明すると単語だけ聞き取れたのか母さんが反応する。



「ん…ああ、あっちのやつに日本の美味しい物を教えて欲しいって言われたから」


「ああ…なるほど、たこ焼きは美味しいよね」



車に乗り込みながら会話の内容を伝えると母さんは納得したかのように賛同して車を走らせた。



「タコ…は分かったが、オコノ…ってヤツはなんだ?」


「お好み焼きな、ほら…鉄板でキャベツとか麺とか重ねて焼いただろ?お前ひっくり返すのが難しいって言ってたじゃねぇか」


「ああ!アレがオコノミヤキか!…確かに、珍しいし美味いしで土産には丁度良い」



エルーの質問に思い出話しをするように説明したら思い出したかのように声を上げる。



「冷凍食品だからレンジでチンするだけで、作る手間はかからねぇしな」


「じゃあソレを各三人分頼む」


「…オッケ、以上か?」


「ああ、いっぱい送っても困るだけだしな」



ミニノートに書いて確認を取ると、どうやらそれ以上の追加は無いらしい。



「んじゃ、またな」


「おう、また」


「…誰だったの?」



俺が別れの挨拶をして電話を切ると母さんが好奇心での質問をしてきた。



「学生時代の友達、どうやら暇みたいだな」


「へー、何してる子なの?」



隠してもしょうがないので、適当にぼかして答えると更に興味本意で聞いてくる。



「軍人だったかな?」


「へー!軍人なんだ!」



プルルル…プルルル…



母さんと話してる最中にまた着信が。



「ったく、俺が異国に帰ってるってのがそんなに珍しい事かね?」


「周りの人たちからしたら話しを聞きたいんじゃない?」



続けざまの電話を母さんに怪しまれないように愚痴るような感じで言うと、ソレが功を奏したらしく特に気にした様子はないっぽい。



「もしもし?」


「もしもし、テイトか?」



…今度こそリザリーだろうと思ってたが、予想は外れハルトだった。



「今度はお前か…なんだ?お前のお土産は双子にか?」


「…良く分かったな」


「エルーがクレインと兄二人なんだからお前は双子だろうと思ったよ」



俺の先読みした問いが当たっていたようでハルトが驚いたように言ってきたので予想した根拠を話す。



「俺が二人目かと思ったら三人目か…話しが早くて助かるが、すまないな」


「なに、こっちはついでで貸しが作れるんだ…多少の面倒には目を瞑るさ」



俺に気を遣ったかのようなハルトの言葉に気にするなと返す。



「そうか…じゃあそうだな、何を頼もうか…」


「エルーはたこ焼きとお好み焼きを頼んだぞ」



マキナと違ってこいつらはノープランのようで、とりあえずエルーのお勧めをそのまま伝える。



…そして結局はハルトもエルーと同じ物を二つずつ注文した。

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