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ピンポーン。
…日も沈み始めた夕暮れ時。
夕飯の準備をしてると家のインターホンが鳴った。
…インターホンを鳴らすって事は役立たずでも母さんでも、藍架でもねぇな…
「…はーい」
「ああ、愛梨…いいよ、俺が出る」
突然な来客に愛梨が返事をしながらソファから立ち上がるので俺はソレを制して手を洗い、玄関へと向かう。
「…あら?遠間のお兄さん帰ってらしたんですかぁ?」
玄関を開けるとそこには何故か式使のお姉さんの姿が。
え、ええー…そろそろ妖怪が出始める時間だっていうのに何故こんな所に?
「…珍しいね、遊びに来るなんて…でも藍架はまだ帰って来てないよ?」
俺を見て不思議そうに首を傾げた式使のお姉さんに意外そうに呟き、目的であろう人の不在を告げる。
「…ああ、藍架はんは今忙しそうですからねぇ…コレを届けに来たんですぅ」
…どうやら藍架に会いに来たワケでは無いらしく、手に持ってるカバンを見せるように持ち上げた。
「…なにそれ?カバン?」
届けに来た、って事は藍架のか?…アイツ、こんな学生が使いそうなカバンを使ってんのかよ…
「愛梨ちゃんの物ですぅ…残念ながらスマホは見つかれへんでしたけどぉ」
「…愛梨の?…まあ立ち話もなんだからお茶でも飲んでく?」
「ほほ、ならお言葉に甘えて…お邪魔しますぅ」
予想外の言葉に一瞬面食らうが外面には出さずにあくまでクールに装って聞くと、式使のお姉さんは会釈して家の中に入る。
「お兄ちゃん誰だったの…ってアレ?」
リビングのドアを開けた俺に、愛梨はそう聞くとその後ろからついてきた式使のお姉さんを見て首を傾げた。
「お邪魔しますぅ…コレ、愛梨ちゃんのカバンを届けに来ましたぁ」
「え…?あ、ありがとうございます…」
「茶葉のお茶と普通のお茶、コーヒーと紅茶とジュース何がいい?」
式使のお姉さんは軽く会釈すると愛梨にカバンを渡してソファに座ったので、飲み物の選択権を与える。
…茶葉のお茶とコーヒー、紅茶は淹れるやつ、普通のお茶とジュースはペットボトルか紙パック。
「茶葉のお茶…淹れられるのならお願いしますぅ」
「オッケー、でも準備してないからちょいと時間かかるよ?」
「分かりましたぁ」
「…お兄ちゃん、あの人誰…?」
多少時間がかかる方を選ばれたので確認を取ると了承され、小箱から玉露の茶葉を取り出してると愛梨が近寄ってきて小声で問う。
「ああ、式使家の現当主…お前の友達の式卜のお嬢さんの親戚…かな?」
…玉露ってお湯の温度何℃だっけ…?
確か沸騰まで行かないぐらいだから…大体80?いや、もっと下だ…50?もうちょい上…今か!
愛梨の疑問に答えつつお湯の温度を思い出しながら鍋に入れた水を火にかけてると…
俺の直勘が働いたので直ぐに火を消し茶葉の入っている急須にお湯を入れた。
煮出す時間も重要なんだよな…ってかミスって二人分作っちまったぜ。
「式卜って…あの紫ちゃんの?」
「そう、その…ってか前の懇親会だか親睦会だかで会った事あるんじゃね?」
「…あー!あの!…あの人かぁ…」
…式卜って名字は他に居そうもないので頷いて思い出すように聞くと…
思い当たる節があるのか愛梨は思い出したかのように声を上げてソファの所へと戻る。
…よし、今だ…今が最高の淹れ時!
時計を見ながら時間を計りつつ、経験や勘を総動員してタイミングを計り…用意した二つのコップに注いだ。
…ふっ…今回もいつも通り完璧に仕上がったな…
「待たせてゴメン」
茶葉を入れないように上手く淹れて自画自賛し、急須はシンクへと置き…
遅くなった事を謝りながらコップを二つテーブルの上に置いた。
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