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「…ココだ」



式部の案内で建物の端の方にある部屋に入ると、なにやら奥のドアの隣に四角い端末のような機械が設置されていた。



…ほう、あの機械にカードキーを通せば開く仕組みか。



「他にコレがある場所は無いよな?」


「この階に隠し扉がない限りは無いハズだ」



カードキーを通してから間違いでした…だと面倒な事態になる事が火を見るより明らかなので、一応確認を取る。



「んじゃ、ま…開けー、ごま」



やる気なく某扉を開ける呪文を唱えながらカードキーを機械に通す。



「…どうやらビンゴのようだな」



自動ドアのようにシュッと横にスライドした扉の奥には下に降りる階段が。



…俺らの予想が地味に当たってたらしく実験場は地下のようだ。



「…意外と古くね?」


「…そうだな、壁や階段を見る感じ…おそらく大分前に作られたのだろう」



カツン、カツン…と式部の靴の音だけが響きながら降りて行く最中に、壁や階段…天井などを見ながら聞くと壁を触りながら同意した。



「結構昔に作られたシェルターっぽいな…」


「確かに、時代を感じさせる趣だ…おそらくは程君の言う通り元は緊急避難場所の可能性が高いな」


「…んな場所で研究してたんなら誰にもバレねぇわ」


「普段出入りしている忍者とてこの場所は知るまい」



式部と話しながら階段を降りて行くと…またしてもドアが。



…コレは鍵も何も無さそうだな……あのドアさえあれば隠し切れてるとでも思ってんのか?



…なんとも警戒心の無い…



ドアノブに手を掛けると普通にドアが開いたので拍子抜けしながら中へと入る。



「おっ…」


「…コレは…!」



部屋の中はさながら童話やファンタジー世界に登場する魔女の家…のような感じだった。



薄暗い照明に部屋の真ん中に大きな魔法陣

壁にはメモ書きの紙が大量に留められており

部屋の角の至る所に黒いカバーの本が大量に積まれている。



…なんだこの魔法陣…?なぜこんな大きさが必要なんだ…?



…このメモは呪文…?冥妖召喚術を発動するための…?



「…どうやら奥の部屋もあるようだ」


「…先行ってろ」


「…程君は?」


「俺はこの部屋を少し調べる」



ドアを発見した式部が報告してきたが、俺はメモ書きや置いてある本の内容が気になったので残る事に。



「…分かった」



式部は頷くと一人奥の部屋へと進んで行く。



…すげー、秘匿とされてた冥妖召喚術の資料がこんな大量に…



一体どこからこんな集めたんだか…



コレを調べれば半妖化した人間を元に戻せる方法だって分かるかも知れんな…



…俺みたいに完全に妖怪化したケースだと元には戻れないと思うけど。



科学班とやらの情報収集力に驚かされながらも、俺は壁一面に貼られてるメモ書きや部屋の角に無造作に置かれている本を開いて中身を見た。







……やべぇな。



え、なに?もうこの段階まで来てんの?



もはや実用化一歩手前じゃん。



世界トップの技術力を持つユニオンでさえ人と魔物のハイブリッドを生み出す研究はまだ第二段階だと言うのに…



この異国は既に実用化一歩手前の最終段階に来てやがるぜ。



…いや、『妖怪』と『魔物』の違いはあるけどさ。



それでもやべぇよ。



コレに書いてある事が本当なら…俺の裏技と同じ事をしようとしてやがる。



死人を生き返らせたり、半妖と半妖を合体させて強くしたり…



人間により近い俺みたいな完全な妖怪を生み出すっつー、とうの昔に禁止された外道の研究。



…今のまま進んだら結局は冥妖戦争の蒸し返しになるんじゃねーの?



…まあソレはさて置き。



ここまで研究が進んでるなんて思いもしなかったわ。



なんて…なんて無駄に高すぎる技術力、まさに他の国とは異なる次元に位置してんぞ。

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