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「…終わったわね」


「逃げるやつじゃなくて良かった…」



せり上がった土の内側が剣山のような鋭い針状になると四方から部下を潰し、ソレを見たリザリーが終わりを告げる。



…が、当然魔界の魔物はこの程度でやられたりはしない。



「えっ!?」


「なにっ!?」


「「うそっ!?」」



4人共完全に終わったと思ってたのか岩山のようなモニュメント?と化した土が四散すると驚きの声を上げた。



「だろうな」


「うわっ!!」



中から全くの無傷で出てきた部下を見て俺が呟くとショコラに襲いかかる。



「…アレでも効かないって…」


「いやいや、あんなん効くワケないだろ」



マキナが驚愕したように呟いたので俺は当然だと言わんばかりに返す。



「…S級の魔物でさえ複数いても一網打尽の一撃で終わるのに…」


「残念だったな、アレはS級よりも遥かに強いんだよ」


「…あ、ショコラが本気になった」



リザリーも驚いたように呟き、事実を言うとショコラの雰囲気が変わった。



ソレが分かったのかマキナがストレッチを始める。



「…さて、どこまで粘れるか…」



本気になったショコラを相手に部下がどこまで削れるかお手並み拝見ってところだな。



「…!?」


「捕まえ…たっ!」



ショコラは部下の攻撃を紙一重で避けつつ地面を沼のように変えると剣を腹に突き刺す。



「…ガアッ!」


「うぐ…甘いね!」



部下の魔法による衝撃波をショコラは避けもせずにモロに食らうが、少しよろめいた程度で剣を離さなかった。



…コレは…決まったな、ショコラの勝ちだ。



あとは最後の悪あがきとしてどれだけのダメージを与えられるか…



「ガ…カッ…!」



剣を刺した部分から徐々に石化していき、部下は痛みで呻く。



…逃げようにも上半身の神経は既に侵されるから動けないだろうな…



しかも足は沼にハマってるからジャンプする事も出来ない。



「おいおい!お前、ソレで終わる気か!?ぬるま湯に浸かったせいで弱ってんのかよ!」


「…?なにを…?」


「何をしようが無駄だって」


「…グ…ガ…!」



俺の指示にエルー達が不思議そうに見るがショコラは勝ち誇ったように言う。



「…果たしてそうかな?俺の部下を舐めるなよ」


「…ぎゃっ!!?」


「「きゃっ…!?」」


「うおっ…!?」



俺がニヤリと笑いながら告げると部下は最後の力を振り絞った魔法で最大級の衝撃波を発生させる。



その威力は油断してたとはいえ、100mほど離れた距離にいたリザリー達を数m後ろに吹っ飛ばすほど。



…俺?俺はもちろん耐えたよ?



…まあそんな威力の衝撃波をショコラはゼロ距離で食らったんだ…



絶対に軽傷では済んでないだろう。



皮膚とかの外側はもちろん、体内まで結構なダメージ負ってると予想。



「…な、なに?今の…?」


「痛た…なんかいきなり凄い突風が吹いたような…」


「…突風というよりは衝撃波、だろうな」


「…おーい、大丈夫か?」



驚いて立ち上がる三人を他所に俺は部下からかなり離れた場所で倒れてるショコラへと近づき声をかけた。



「げほっ!ごほっ!…うー、ひど…げほっ!」



ショコラは膝立ちになると噎せるように吐血し、何かを喋ろうとしてまた吐血する。



…あーあ、服もかなりパンキッシュになって血まみれになってんなぁ…



「…最後の最後に油断するから…とりあえず回復させるから部下の石化を解いてくれ」


「…ん…痛っ!!」



ポーチから魔札を取り出しながらショコラにお願いすると、沼に半分沈み石像のようになってた部下を覆ってた石が崩れ…



沼が元に戻って部下が地面に倒れ込む。



「…ロックオーン、レスリトア」



ショコラの周りに魔札を三枚配置して魔術を発動させた。



「う…う?傷が治った!」


「…ロックオン、レスト…レスト、レスト」



ダメージや傷が全回復したショコラが元気よく立ち上がったので、今度は部下の傷を治す。



…つーても魔札を一枚に、あとは魔石の魔力を使った詠唱破棄の治癒魔術でだけど。



流石にショコラみたいに三枚は多すぎるからなぁ…



魔物なんだから魔術での回復量も人より多いだろ、多分。



「…いやー、まさかこんなボロボロになるとは…要らない服で良かった…」



余裕で勝てると思ったのになぁ…と、ショコラは自分のボロボロになった服を見ながら愚痴る。



「…さて、部下が全快したところで次は誰だ?」


「私!」


「…なら、今の内に二重の身体強化しろよ?」



俺が尋ねるとマキナが元気よく手を挙げたので一応忠告した。

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