28

「水の量=魔力って事?」


「密度の問題なのか?この場合は魔力の量で魔術のクオリティを上げて硬度を増す、と言う意味合いに近いと思うが…」



…エルーのやつ、頭が良いのか悪いのかさっぱり分かんねぇ…



さっきは見ただけで理解出来なかったくせに、今は俺の言いたかった事を的確に理解出来ているエルーの頭は良いのか悪いのか…の判断に困ってしまう。



「お前良くあの例えで理解できたな…切る時は水だけど、受ける時は凍らせるって思っとけばいいよ」


「あー、なるほど…そういう感じかぁ…」



魔力の量を増やす事を凍らせるに変換すれば…硬度が増すって意味も多少伝わると思われ。



俺のへたくそな例えがショコラに理解させるのに不十分だと分かってるので微妙に補足した。



…やっぱり感覚を言葉や文字、文章とかで表現するってクッソ難しいな…



そんな頭の悪い俺には論文だかレポートとか絶対書けねぇ、って再認識したわ。



…つまりは俺は研究者には向いてないって事だ。



「まあそんな形状だからな…上手く使えば相手が受けようとした武器をすり抜けて攻撃出来る」


「…確かにウォーターカッターを縦に振り下ろされたらガードは難しいね」


「…基本ガード不可の代わりに相手をガード不能にするわけか…」



良く考えたらとんでもない武器だな…とエルーは愕然としたように呟く。



「当然魔術師とかお前らみたいな魔法剣士的な奴には魔術でガードされるから、厳密にはガード不能では無いぞ」



魔力が無い奴には防ぎようがないから効果的だろうけど…と俺は欠点を指摘しつつ一応補足する。



「うーん…でも魔術師相手でも普通の剣としては使えるんでしょ?」


「そりゃな、無効化されるのはすり抜けだけだし」


「…だったら普通に強くないか?」



ショコラの疑問に欠点部分を告げるとエルーがそう聞いてきた。



「ソレは使い手によるんじゃね?」



使う人によっては普通の剣が使い易い…って言う奴もいるだろうし。



…そもそもコレのコンセプトは暗器だから使い手を選ぶのも当然か。



「…さっきフォルムって言ってたよね?形状変化とかも出来るの?」


「出来るぞ、今んところは槍と剣、刀に大鎌にナイフ…あとは斧とか」


「…剣と刀は両刃片刃の違いがあるとして…ナイフは要らないんじゃないか?短剣で十分のような気もするが…」



俺がショコラの質問に答えるとエルーが苦言のような疑問を呈してくる。



「ソコな、俺も思った…ソレをどうにかしようとしたのが一番時間かかってな…無理ならナイフは止めようかと思ったんだ」


「??どういう事?」


「リアクター、オン…フォルム、ナイフ」



俺の説明を聞いてもエルーとショコラは不思議そうに首を傾げるので、論より証拠…実際に見てもらう事にした。



「…ナイフの形…だな」


「てい」



エルーが不思議そうに柄の先を形取るオーラ的なのを見て呟いたので、そのオーラ的な刃を射出させる。



「なっ…!?」


「えっ…!?」



カッ…と壁に刺さって付いた傷を見てまたしても二人は驚愕したような声を上げた。



「仕込みナイフがモデルでな…アレはスプリングの力だったが、これは魔力の力だ」



しかも魔力が尽きない限り何発でも射つ事が出来て、連射も可能だぜ…と聞こえてるか分からないけど、一応説明する。



「…どういう原理なの…?」


「発射して直ぐに魔術で形取るだけ、だから連射する際には魔力をずっと込めないといけない」



質量が無いから鎧に傷を付けるぐらいで威力はさほど高くないけど…



布程度なら簡単に切り裂くから防具を着けてない兵士になら有効だと思う。



…とはいえ、戦場で使うにはやっぱりちょっとキツイかな?



さっきも言った通り暗器としては超優秀な武器になる予定で作ったモノだし…



…やっぱり普通の武器としては既存のモノより少し劣るかもしれん。



色々比較して総合的に考えれば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る