6
「無視すんな!」
3分後。
俺の予想通りエリアがドアを開けるや否や怒鳴って入って来た。
「どうしたそんなイタズラ電話をかけられたみたいな顔をして」
「お前の所為だろうが!」
ハルトが不思議そうに聞くとエリアは指をさしてまたしても怒鳴る。
「起きなかったエリアが悪いんでしょ…そうヒスらないでよ」
「会話する気無いんなら電話が繋がった時に切れよ!俺独り言呟いてるアホみたいじゃねぇか!」
「おお、アホがやっと自覚した」
「な…!」
ショコラの耳を塞いでの文句にエリアが愚痴りだすので、朝食を食べ終わった俺が軽く驚いたように言ったら怒ったのか顔を真っ赤にさせた。
「まあそう怒るなよ、美人な面が台無しだぞ?」
「てめぇ!喧嘩売ってんだな?そうだろ?買うぞ!表に出ろ!」
いつものように煽ったらいつものように騒ぎ出す。
「…エリア、これ以上騒ぐと流石に怒るよ?」
「…ぐっ…!」
俺に遅れて朝食を食べ終わったショコラがフォークをテーブルに置き、冷たい目で睨みながら冷たい声で告げるとエリアが静かになる。
…うおお…!…ギャップ、萌え…!
「…ショコラ!」
「え?きゃっ…!」
そんなショコラを見て俺は自分の中の薄汚い欲望に負けかけて飛びつき、押し倒してしまった。
…やべっ!俺、何してんだ!?無意識に行動していた…?この俺が…?
…でも、ショコラがあんな一面を見せるから…
強気な女を堕としてみたい…快楽で堕として染め上げたい…!
「ち、ちょっ…!ていと!?」
……はっ!?いかんいかん!危うく欲望に負けるとこだったぜ!理性のブーストON!
「…くそっ!俺は何を…!ハルト!エリアでもいい、とにかく俺を思いっきり殴れ!」
困惑した様子のショコラを見て多少興奮したが理性が押し勝ち、馬乗りの状態から退いて自分の戒めのために頼む。
「…え?いや…」
「…了解した」
「…ぐっ…!」
いきなりの頼みにエリアは困惑するがハルトは目を瞑って逡巡した様子を見せ、決意したように俺の顔面を思いっきり殴る。
「…え?あの…なにを…!?」
「…殴られるだけじゃダメか…俺の不甲斐なさに対して罰が軽い……せいっ!」
クレインも困惑した様子を見せたが俺は無視して呟き…
無名を抜いて自分の心臓に思いっきり突き刺した。
「「なっ…!!」」
「ちょっ…ていと!?なにしてるの!?」
「ごふっ…流石に、キくぜ……ぐっ…!」
俺の突然の奇行にエリアとハルト…クレインも驚いたまま硬直し、ショコラは焦ったように駆け寄って来る。
そんな4人を尻目に俺は口から血を吐きながら呟き無名を抜く。
…魔界製の服を通すため結構力を入れたから勢い余って貫通しちまった…
「キくぜ、じゃなくて!いくら自罰的だからってやり過ぎでしょ!」
「…やり過ぎなんかじゃねぇよ…これでもまだ甘いぐらいだ…ほら、もう止まってやがる」
焦ったように心配するショコラにそう告げて手首を掴み、服の上から刺した場所に手を当てる。
「…!ホントだ…でも!自分の心臓を刺すなんて何考えてるの!?」
普段は平気で俺を殺そうとするぐらいの薬を盛るクセに…
何故か自殺紛いの事をしたら怒ったように責められた。
「欲望に負けないための戒めだよ」
面白半分の好奇心での行動や無意識下の行動ならまだしも…欲望に負けたってのはアウトだ。
痛みを持って自分を戒め、欲望に負けない理性の強さ…
強靭な精神力を更に鍛えるための糧にしなければならない。
…でなければ欲望に負けて醜態を晒す事になってしまう。
ソレだけはなんとしても避けねば!
「…いくら欲望に負けたからって自分で心臓を刺すか?普通」
「流石に自分に厳し過ぎるだろう…」
俺のショコラのやりとりを見てた二人が若干ヒいたように呟く。
「仕方ないだろ、殴られた程度じゃ反省しないんだから」
「…じゃあ蹴る?踏む?」
俺がエリア達に言い訳をするとショコラが怖い笑顔で提案してくる。
「…そうだな、じゃあ踏むで」
「このドMが!」
ショコラのSスイッチが入ったのか俺の選択に罵倒しながら胸のあたりを軽く蹴って倒す。
「…結局蹴るんかい…」
「ほらほら、踏んであげるんだからありがたく思えよ!」
呆れながらため息混じりで呟くと靴を脱いで柔らかい足で俺の腹をフニフニと軽く踏み始めた。
…怒ってる割に一応マッサージみたいに痛くしない程度に踏むんだな…
…やべっ…ショコラの足の柔らかさに反応しちまう…!
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