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「…やあハロー?ショコラ達がどこに居るか分かる?」


「え?…あ、ラグイーズ所長ですか?少々お待ちください」



受付にいつも通り挨拶しながら尋ねると、受付嬢の女子研究員は不思議そうな顔をしつつもパソコンを弄った。



「エリアやハルトとかと一緒に居てくれりゃいいんだけどねぇ…」


「…ハーネット所長やニルフレード所長ともお知り合いなんですか?」



俺の呟きに受付嬢はキーボードを弄る手を止めて聞いてくる。



「…夜のフレンズってやつかな?」


「えっ!?あ、し、失礼しました…!」



意地悪そうな笑顔で嘘を吐いたら本気だと思ったのか、驚いた後に焦りながらパソコンに目を向けた。



…まあどうせ後からバラすし今は誤解させといてもいっか。



「?なんで謝るの?」


「い、いえ…それは…あ!ら、ラグイーズ所長達は第二休憩室に居るみたいです!」



あえてキョトンとした演技で聞いてみたら話を逸らすように場所を教えてくれる。



「??ありがとう」


「いえ…」



一応不思議そうな表情で首を傾げた後に可愛らしい笑顔でお礼を言い、ショコラ達が居るであろう部屋へと向かう。



「呼ばれて飛び出てじゃじゃんじゃーん!」


「「「「??」」」」



第二休憩室、というプレートがある部屋のドアをテンション高く開けて入ると…



ショコラ達三人+クレインに不思議な顔で見られた。



…紅茶とお菓子がテーブルの上にあるから、おそらくティータイム中だったんだろうな。



「…誰?」


「…知り合い?」


「…いや…」



ショコラがエリアに聞くと、スルーパスするようにハルトに聞く。



そのハルトは否定しながらクレインを見る。



「…え?い、いえ!私の知り合いでもありませんよ!」



三人の視線が集中するとクレインは両手と首を振って否定した。



「ひっどぉーい!忘れちゃったの!?あんなに愛しあったのにー!」


「…おっと」


「え!?俺!?」



わざと定番でテンプレな展開を起こすために、俺はカマトトぶった声を出して軽いヒステリーを演じながらソファに座ってるエリアに飛びつく。



…俺が早足で近づくとエリアの隣に座ってたハルトが何かを察したように退いたので、飛びつきざまにそのまま押し倒す。



…なぜエリアを選んだかというと…



ただの消去法。



ショコラだとヤバいし、ハルトは男だから選択肢にすら上がらない。



エリアならまだ見た目が清楚なお姉さんの上、ラッキースケベを起こすという特性を持ってるから…丁度良いだろ。



…流石に、女装した男が外見清楚美女な男を押し倒す。って字面にしたらヤバいな…



見た目は可愛らしい女の子が美しいお姉さんに飛びついてる百合的な絵面なのに、中身はホモホモしいっていうギャップ…



…うぇっ…



…こういうイタズラは、考えたら…冷静になったら負けなので…



心を消して演技に徹する事に。



「もー!本当に覚えてないの!?思い出してよ!今、直ぐ!」


「うわうあうあ…!」



ヒスりながら胸ぐらを掴んで激しく揺すってるのでエリアは言葉にならない声を漏らす。



「…ち、ちょっと止め…!一旦冷静になって、ね?」



呆気に取られていたショコラが後ろから羽交い締めにするようにしてエリアから剥がし宥める。



「…貴女ね!私から奪ったのは!この泥棒猫!…なーんちゃって」


「違っ…!…え?」



俺は薄っすら涙を浮かべながらキッと睨んで指差して叫び、演技をやめた。



ショコラも怒ったような感じて反論しようとしたが、俺の突然の態度の豹変にまたしても呆気に取られたような声が出る。



「最初に俺を止めるのはハルトだと思ってたんだけどな…意外だ」


「「「「…え?」」」」



俺がハルトを見ながらそう呟くとみんなワケが分からない様子で首を傾げた。

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