3

「…も、もしかして…ていと…?」



この部屋に数秒の間沈黙が流れ…突然閃いたのか、ショコラが疑わしそうに聞いてくる。



「おお、良く分かったな…流石はショコラ」


「ひゃっ…!」



変装してるからいいかな?と、俺は普段なら絶対にしないであろう事をした。



…ショコラに正面から抱きつ…ハグしてそのまま頬をキスをする。



「えっ…?…えっ…!?」


「…すげぇ…あのテイトが…」


「…まさかあそこまで心を消して演技に徹せれるとは…」



困惑してるクレインとは違い、エリアとハルトは感心したように呟く。



「……!捕まえた!」


「捕まっちゃったかー」



急に我に返ったショコラはそのまま俺を抱きしめ返して捕獲した。



別に逃げる気は無いのでそのまま捕まえられたままやる気なく適当に返す。



「…ほ、本当に程人さんなんですか…?」


「えー?技を教えてあげたのにそんな事言うー?もう教えてあげないよー?」



未だに信じられないようなモノを見るような目で呟いたクレインに俺しか分からない事を疑問形で言う。



「…あれ?程人さんってそんな喋り方でしたっけ…?」


「…いい加減変装解いてきたら?キャラも戻して」


「じゃあ離して欲しいなー?」



クレインが首を傾げるとショコラが飽きたように指示してきたので俺も首を傾げながら提案する。



「はいはい…」


「んじゃ、行ってくるわ」


「「あ、戻った」」



ショコラが俺から離れたのでキャラを戻すとエリアとハルトの声が被った。



が、ソレを無視してトイレに向かい…個室に入ってある場所へと影移動。



ソコで変装を解き、声を戻してから再度研究所へと戻る。



「ようハロー?」


「あ、戻ってきた」



今度は普通に挨拶してドアを開けるとショコラはクッキーを食べながら振り向く。



「…で、さっきのアレはなんだったんだよ」


「…アレ?…ああ、あの例の薬を飲んだらあんな感じになるらしいぞ?お前がそんな感じだったし」


「…は?ウソだろ?」



エリアの不機嫌そうな問いに今思いついた適当なでっち上げで返すと、疑うような顔になった。



「マジだって…なあ?」


「…ああ、どこかで見た事ある光景だと思ったら…そういえばあの時と同じ状況だったな」


「…そだね、私もデジャブを感じちゃったよ」



俺がテーブルの上にあるクッキーを取って話題を振ったらハルトが思い出すように呟き、ショコラもソレに賛同する。



「ほらみろ、お前に押し倒されてヒスられた俺の気持ちが分かったか」


「そんな…嘘だろ…?俺が…テイトを…押し…!?嘘だー!!」



俺のダメ押しにエリアは事態を受け入れられないらしく、軽いパニック状態になると急に叫んで部屋を飛び出して行った。



「…あーあ…アレ、大丈夫なの?」


「どうせ直ぐに戻ってくるだろ」


「それもそうだね」



珍しくショコラがエリアを心配した…と思えば直ぐにどうでも良さげに呟く。



…あいつアホなんだから俺みたいにどうでも良い事の記憶力は薄い方だし…



ちょっと時間が経てば忘れてケロッとしてるからな。



心配するだけ損だと思うよ。



「…抱きつかれた事には触れないのか?」


「別にー?女の子に抱きつかれるなんて慣れてるし」


「あ、あの…程人さんは男じゃ…」



ハルトの疑問にショコラは笑いながら答え、クレインが突っ込む。



「あの時は女みたいなモンだからなぁ…ねー、ていと…抱っこ」


「なんでだよ」


「…ほらね?普通ならあんな事絶対しないし、なんとも思わないよ?」



説明するように俺に手を伸ばしてせがんできたので普通に拒否すると笑いながらそう続ける。



「おんぶなら良いぞ」



抱っこは普通にお姫様抱っこになるから面倒だけど…



おんぶならおぶった時に背中に胸が当たるっつー役得があるし。



なんなら肩車して太ももに挟まれるのもいいな。



…下手したら首の骨を捻じ折られたり、細い脚でネックロックだかネックブリーカーみたいに締められる危険性もあるが。



細くて柔らかい割りに力が強いからな…下心全開で油断してると危険なんだ。



「今は動く用が無いからパス」



俺の下心を見抜いたワケでは無さそうだが、普通に拒否られた。



「いやいや、本気にすんなよ…」


「おんぶならいいのかよ、ってツッコんで欲しかったのか?」


「…あー、そゆことね」



俺がため息混じりに呟くとハルトが意を汲んだような事を言い、ショコラは納得したように呟く。

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