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…それはさて置き。



なんかちょっとズレて来てるので本題に戻そう。



「…そういえば、あの変な特殊部隊はこの二人を除いて駆除したから」


「…あ、ありがとうございます!」



俺が思い出した振りをして本題を告げるとお姉さんも思い出したように胸から手を離し、お礼を言い頭を下げる。



「いやいや、まあ仕事だから」


「?…あれ?見たところこっちは男性のような…」



お姉さんは俺の言葉に不思議そうに首を傾げたが男を見てボソッと呟いた。



「ああ、ソイツは将来性があるから生かしておいた…だから殺さないでね」


「将来性…?」


「ん~…なんて言えば良いのかな…とりあえずコイツは必要になる」



ソレがお姉さんに取って良い事になるのか悪い事になるのかは分からないが…



ってのは言わないけどさ。



…だって世界的なバランスの為に必要になるんだから、残念な事にお姉さんの都合の良し悪しは関係無いんだよね。



「…じゃあ牢に突っ込んで置くね」


「…そだね、今はソレが良いかも」



このお姉さんとの力量の差を察したらおとなしくなるか下に就くか、になるかも知れないし。



あの女の子の矯正が終わってお姉さんの部下になったら男の方も味方になる可能性だって…



…まあソレは先の事だからその展開を10パターンぐらい予想出来ても断定は出来ないからなぁ…



最悪なパターンさえ回避できてればどのパターンでも問題は無いが。



そもそも最悪なパターンだって全158通り中の二通りだけだから警戒する必要は無い。



もしそうなっても俺が出向けば済む話…というか俺が出向く事になるのが、俺にとっての最悪な僅か二通りのパターンなんだけどね。



だからどうかその展開にはならないように祈っておこう。



…心の片隅で。



「…あ、あと別の特殊部隊の件だけど…」


「…そういえば二つの国から攻められてるんだっけ?」



お姉さんの再び思い出したような言葉に俺もすっかり忘れてた事を思い出す。



「うん、あっちの方はもう直ぐ片が付くみたい」


「へー…って事は部隊でも派遣したの?…っ…!?」



お姉さんの報告に何気なく返すと俺のスーパーな直勘が反応する。



なんだこの気配は…!?ありえねぇ、常人のオーラじゃ…もしかして…円卓の騎士か…?



…いや、だとしたらなぜ?何故こんなところに…?



「?村さんどうしたの?」



バッと後ろを振り向いた俺にお姉さんが不思議そうに問いかけた。



「…いや、なんかヤバイ奴が来るな…って」


「え?うそ…もうそんな時間?」



俺の返答にお姉さんは慌てて腕時計を見る。



…あれ?さっき会った時、腕時計なんてしてたっけ?



「…なんかあるの?」


「うん、ユニオン共和国と同盟を結ぶ事になって…今から城の中で調印式があるの」



…マジかよ…ウソだろ。



なんでこのタイミングなんだよ…いや、まあ不幸中の幸いというべきか俺だって確実にバレない変装はしてるけど。



おそらくリザリー達やショコラ達と遭遇する事は無いだろうけども。



…それでも…円卓の騎士が来てるってんなら同期のアイツが来てる可能性だって…



ソレに俺の元上司が来てる可能性も無きにしも非ずなワケじゃん?



…やっべぇ…外交官だか護衛の円卓の騎士だかがもう街に入ってんだから、今から急いで逃げようにも展開的に厳しい…



つーか調停者ってもしかしてソレを分かってた系?



『ミュンラの戦力』ってユニオン側が加勢する事も含めてだから俺に手を出すな、って指示したの?



「…って事はこの気配は円卓の騎士か…」


「なんか護衛として一人、戦力として一人…合わせて二人来てるみたい」



円卓の騎士を二人も使うなんて贅沢だよね、とお姉さんは嬉しそうに笑う。



戦力?戦力って事は…あと一つの特殊部隊の方はその円卓の騎士の一人が…?



「もしかしてその戦力って…」


「うん、あと一つの特殊部隊の相手をしてもらってる」



ふと気になったので聞いてみたらビンゴだった。



…それならマジで直ぐに片が付くな。



あの特殊部隊、人体実験で人並み外れた力を手にしたとしても所詮はその程度。



円卓の騎士のようなトップクラスの化物には遠く及ばない。



…良かった、あと一つの特殊部隊の所に行かなくて。



行ってアイツと会ったら気まずいし。



…まあ来てない可能性の方が高いかもしれないけど、万が一っつーのが…ね?

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