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「レポートねぇ…ご苦労なこった」


「他人事だと思って…」


「実際他人事だしな」


「…お前にも手伝わせるぞ?」



俺には関係ないので適当に返してるとハルトから脅しのような事を言われる。



「適当に書いても良いんならいいぜ」


「良いワケないだろ…最低限理解できるような表現をしてくれ」


「感覚的な表現なら最低限理解できんじゃね?」


「…もういい、俺が悪かった…」



作文も書けない俺の返事にハルトはため息を吐いて呆れたように諦めた。



「全く…しっかりしろよ、ソレでも研究者か?」


「なんで俺が責められてるんだ?…お前こそ作文ぐらい書けるようになれよ、社会人だろ」


「生きてく上で必要の無い無駄なスキルは身に付けない主義だから」


「…ホントお前は昔から自由だな」



コレ以上言っても無駄だと悟ったのかハルトは話を打ち切るようにそう告げる。



「はっは、褒めたって飯以外何も出ないぞ?」


「……飯は出るのか」



皮肉をスルーするとハルトが何か言おうと口を開いたが…



直前で我慢したのか普通のツッコミのような事を言う。



「ってかもう作って…あ」



俺が喋ってる途中でケータイに着信が。



「…先に食べてるぞ」



ケータイを取るとハルトはそう告げてショコラ達が居る部屋の中に入って行った。



「もしもし?」


「…あ、村さん?」



ドアを閉めて電話に出ると聞き覚えのないような可愛い感じの女の子の声で、相手を確かめるように俺の偽名を尋ねる。



…え?誰だ?俺の番号を知ってるやつって家族や友達を除いたら片手で数えられるぐらいしか居ないハズなのに…



「ああ、うん…誰?」


「…あ、えっと…ミュンラのシェリー・ミラリスだけど…」



ミュンラ?シェリー・ミラリス?…どっかで聞いた事があるような、無いような…



…うーん…




……誰だ?



ミュンラって昔はイランって呼ばれてた国だろうけど…



そんな所に知り合いなんて居たっけ?



…もしかして今ミュンラに居るだけな系?



まあ俺の番号を知ってるんだからおそらく知り合いである事は間違いないハズ。



「…えっと…村人Bさん…で合ってます…よね?」


「合ってる合ってる…間違ってないよ、大丈夫」



電話の相手を思い出そうとしてると不安そうに聞いて来られたので、一応肯定した。



「良かった…間違ってたらどうしようかと…」


「…んで?何の用?」



俺は電話相手の安堵したような呟きを聞いて思い出す事を諦めて話を進める。



…どうせ知り合いなら会えば思い出すだろうから分かると思われ。



逆に知らんやつだったらどうしよう…



リザリー達の誰かが俺の電話番号を教えたっつー可能性も無きにしも非ずだし。



「あ…ちょっと困った事が起きて…出来れば助力が欲しいなー、って」


「…困った事?」


「うん…あ、忙しかったら全然良いから!それならコッチでなんとか対応するし!」



しどろもどろのような返事に聞き返すと何故か焦ったようにそう言われた。



「…とりあえず詳しくは会ってから聞くよ、待ち合わせ場所は?」


「近くにいるの!?じゃあ城門前で待ってるから!」



電話越しだとどうも話の内容と相手の意図が読めないので直接会う事に。



ソレが予想外だったのか相手は驚いた後に急いで待ち合わせ場所を告げると電話を切る。



…えらく慌ててたな…そんなに急を要する事態って事なのか?



「…おーい、ちょっくら出かけて来るわ」


「え?どこに?」



そのまま居なくなったら電話とかかかって来そうなので、一応ドアを開けて報告すると既に料理を食べ終わってたショコラが聞いてきた。

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