15
「…今日中にはある程度でも形にしないと…」
俺はクレインの呟きを聞いてない振りして研究所へと戻った。
そして25分後。
研究所に戻ったはいいがハルト達の姿が見えない。
…おいおい、もしかしてマジで俺抜きで決勝戦を始めちゃった系?
一応受付嬢に聞いてみたもののまだ戻ってきてないみたいなのでエルーに電話して場所を聞き、クレインを残してその場所へと向かう。
「…マジかよ」
研究区画から20分ほど離れた荒野地帯に到着した俺はマキナとショコラの戦っている姿を見て思わず呟く。
「お、早かったな」
「…いやいや、何これ?決勝戦?」
「残念ながらまだ二回戦の途中だ」
ハルトが俺に気づいたので不思議そうに聞くとエルーが予想外の答えを言う。
え、まだ二回戦?…って事はなんだ?今さっき始めた感じのやつ?
「…今日は随分とのんびりだな」
「は?この戦いが始まったのってお前達が出て行ってから30分も経ってないぐらいだぞ?」
俺の呟きにエリアが反論するように疑問系で返してくる。
「…冗談だろ?」
…アレから何時間経ってると思ってんだよ…軽く4時間は経ってんぞ?
まさかたかがお遊びの闘いでそんな…
「マキナ達の試合が終わらないから私達の試合はまだ始まってないわよ」
「ええー…」
リザリーの言葉でおそらくエリアがあってたんであろう事が分かり、俺はヒいたように呟いた。
「…あ、程人君だ!」
「えっ?…あ、ホントだ!」
遊びでは無いような戦いを見てるとマキナが俺に気づいて声を上げ、ショコラも声を上げる。
「…よし、程人君!フォローよろしくね!」
「え?」
俺が手を上げてヒラヒラ振るとマキナが意味不明な事を言い出し、思わず間抜けな声が出てしまった。
……っ!あ、これ、ヤバいやつだ。
マキナの発言で俺のスーパーな直勘が反応する。
俺は直ぐさま指を強く齧って血を出して舐め、血を操る能力を使えるようにすると強制リミッター解除をしてフルにした。
「「「「…??」」」」
そんな俺の行動が意味不明だったからかリザリー達は不思議そうに首を傾げる。
「いっくよー!」
「…くそっ!あのバカ…!」
するとマキナが声を上げ、その意味が分かった俺は悪態を吐く。
「レール…ガーン!」
「えっ!?」
「「なっ…!?」」
「はあっ!?」
「エシュ・ウル・アバラ…ウランドゥミグナ!」
マキナのまさかの禁止技の使用に4人は驚愕し、俺は魔力を使ってバカでかい門を出現させた。
そのバカでかい門のおかげで、ギリギリでショコラに避けられたマキナの技の余波による衝撃波?的なのを防いで二次災害も防ぐ事に成功。
…俺がアレを出さなきゃここら一帯は地殻変動ばりに大変な事になってただろうよ。
つーか下手しなくてもあの威力なら研究区画まで届いて半壊するぐらいの被害が及んだんじゃね?
「あっぶなぁ…!」
なんとか土魔術による防御攻撃と自分の回避でマキナのレールガンを避けたショコラは距離を取りながら安堵の息を吐く。
「まだまだ!レール…キャノン!」
「ちょっ…!!ドゥール・ドゥミグナ!…嘘だろ…!クイン・ディミグナ!」
続くマキナの禁止技に俺は焦りながら攻撃進路上にバカでかい門を二つ、前後二重になるように出現させる。
が、攻撃の余波による土魔術を弾にした衝撃波?の威力が強すぎて最初の門が耐えきれずに壊れ、更に二つ…三重でバカでかい門を出現させた。
「あはは!いいね!そこまでやるか!」
「ぐ…くっ…!」
さっきのようにギリギリで避け切ったショコラは楽しそうに笑うがそれとは正反対に俺はキツい。
なんとか研究区画を軽く消し飛ばすほどの威力がある余波?を防いだけども、俺の魔力はもうゼロだ。
マキナのやつ…!この州ごと吹っ飛ばすつもりかよ…!
俺の神術でなんとか防げたから良かったものの…
防がなかったら地図から一つの州が消えてんぞ!?
「そんじゃ私も…ていと!フォローよろしくっ!」
「はあっ!?」
ショコラの嬉しそうな悪魔の宣告に俺は驚愕せざるを得ない。
ただでさえ異国を世界地図から消せるような攻撃を防いで魔力が尽きているというのに…
更にそのレベルの攻撃をされてソレを防げというのはあまりに酷な話じゃないか?
ハイになっているマキナやショコラに何を言っても馬の耳に念仏、糠に釘だろうし…
…だがやらねば研究区画どころかこの州が地図から消えてしまう…
そうなるとかなり大勢の女の子達が死ぬ事になる。
…それだけは避けねば。
「くっそ!エルー、ハルト、魔力貰うぜ!」
「はっ…?」
「え…?」
本当はやりたくなかったが…しょうがないので俺は魔力を奪うために素早くハルトの首を噛み付いて血を吸い、エルーには血を固めた爪楊枝状の血を刺した。
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