13

「程人さん、魔術を教えて下さい!」



原本?である資料を影移動で元の場所に戻し部屋でコピーした紙を読んでると朝早くにも関わらずクレインがやって来る。



「ん?ああ、ちょうど良い所に…はいよ」


「?なんですか?この紙…」



俺が近寄ってきたクレインに数枚ある紙の内の一枚を渡すと不思議そうに首を傾げながら受け取った。



「一応教えようと思ってる強化魔術の資料」


「??快感増幅…?」


「間違えた、コレだ」



クレインの呟きを聞いて俺は渡した紙が間違いである事に気づき、すぐさま取り替える。



「??なんですか?今の…?快感…?」


「拷問とかに使う系のやつだから気にしないで」



理解する前に強制的に取り上げたから詳しくは見なかったのか、不思議そうに問いかけたクレインになんとかごまかすための言い訳をした。



…ふう、なんとか媚薬と同じ効果がある魔術だって気づかれなかったみたいだな…



迂闊だったぜ、危ない危ない…



「え…わ、分かりました…」



『拷問』というワードに反応したのかクレインは少しビビって俺が渡した紙を見る。



…快感増幅魔術…か、昔の俺ってこんな魔術も発見してたんだな…



雷魔術の延長上にある補助系の一端か。



コレさえ使えるようになりゃあ薬なんて持ち歩かなくても…



って言っても使えるようにはならねぇんだけど。



魔石の魔力をこんな無駄な魔術で使いたくねぇし。



「とりあえずソレは強化魔術ではあるけど、効果がどれだけあるかは分からねぇから」


「…え?」



熱心に紙を読んでいるクレインにそう告げると、聞こえてないのか意味が理解出来てないのか分からない声を出す。



「だから、その強化魔術がどれくらいの効果か未知数って事」


「そうなんですか?」



聞こえてないと判断して同じ事を言うと不思議そうに首を傾げられた。



「ん、実際使った事ないからねぇ…効果は使ってみてからのお楽しみ、って事だ」


「…使ってみてからのお楽しみ…」



俺が考えるようにしながら言うとおうむ返しのようにボソッと呟く。



「とりあえず理論云々よりも実践するか」



こういうのをなんて言うんだっけ?



論より証拠?百聞は一見にしかず?案ずるは産むが易し?



「…はい!よろしくお願いします!」



今の状況に当てはまるようなことわざを記憶の中から探ってるとクレインが元気良く返事をして頭を下げる。



「…あれ?どこか行くの?」


「ああ、クレインにちょいと技を教えにな…昼までには戻るって伝えといてくれ」



外に出ようと廊下を歩いてると寝起きであろうマキナと遭遇。



修行的な事を伝えてハルト達への伝言を頼みそのまま外に出た。



…多分だけど双子の試練だかなんだかの決勝戦は昼にやるだろうよ。



まあ俺としては俺抜きで昼前にやってくれていても一向に構わないんだがな。



どうせ二回戦ぐらいなら俺が居ようが居まいがやると思うし。



決勝戦は誰と誰になるんかね…?…そっちもなってみてのお楽しみ、って事か。



少し考えながら歩く事20分。



研究区画から少し離れた場所にある山林地帯へと到着。



…ここなら滅多に人が来ないから鍛練とか修行とかバトルとかにうってつけだろ。



「んじゃ、まあ…昼までには戻らないといけないから早速始めようか」


「はい!」



俺が少し奥に進んで立ち止まり、振り向いてそう言うとクレインは気合を入れるように返事する。



「おっとその前に…そういや学校はどうした?」



あっちは全寮制だったハズだからそう簡単には外に出れなかったような気が…



「今は学校はお休みに入ってます」


「なるほど、夏休み的な感じか」


「はい」



…今が何月か、とか興味は湧かないし微塵も関係無いけど異国はそんな寒くも暑くもなかったな。

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