38

移動する事一時間後。



第三試合の試合会場である洞窟へと到着。



…因みにあの元草原のクレーターはショコラが土魔術で平らに均したので、戦場跡から荒地程度までには戻っている。



「さて、始める前に予想を聞いとくか」


「ハルト兄|(リザリーさん)」



ハルトがある程度の距離まで離れたリザリーを見て双子にそう言うとさっきと同じく答えが分かれた。



…今の所、俺とマキナの勝負でマキナを選んだ時以外は被ってないな…



まあ俺って弱者だから弱そうに…負けそうに見られてもしょうがないけど。



実際、ここぞ!という決める時以外の勝負なんて全敗でもいいし。



決める時だけ勝てばソレで失敗にはならないから。



逆に全敗してた方が相手に油断させれる分ここぞの時に決められるっていう。



練習でいくら勝とうが、全勝してようが…



本番で負けたら意味無いんだぜ?



世の中結果が全てで、結果の出せない過程なんて無意味だしね。



勝って生き残れば過程は宝、負けて死んだら過程はゴミ。



負けても生き残れるのならば、過程は大事かもしれんが…



負けても生き残れるのは、ここぞという時じゃないどうでもいい結果の時だけ。



いわば練習。



常に戦場のような世の中で果たして練習で済むのはどこまでだろうな。



…今から始まる戦いはどんなにレベルが高かろうとたかが練習にすぎないんだけど。



「マキナ、頼む」


「オッケー…始め!」


「永久の狭間に在りし悠久の時を過ごしモノよ…」



ハルトが俺らからある程度離れて合図を頼むとマキナは直ぐに手を上げて戦いの開始を告げ、リザリーが詠唱を始める。



「させるか!」


「…その力を振るい地に這いずる敵を滅せし…」



詠唱を阻止しようとハルトは無詠唱で氷魔術を使ってリザリーの足元を凍らせようとするも余裕で避けられた。



「甘いぞ!」


「…くっ…」



が、避けた先にも魔術を仕掛けてたのか上から氷柱が落ちてくる。



ソレも避けようとした先にはハルトが接近して剣を抜こうとしており、リザリーは詠唱を止めて上を向いた。



「…やばい…!」


「矢が手に入ったわ」



ダッシュで距離を詰めていたハルトが急ブレーキするように止まると、リザリーは落ちてきた氷柱を全て受け止め笑う。



「くっ…間に合え…!」


「…さっきの後だし…範囲に気をつけなければね…ハヤディブロクードゥ」




一瞬にして回避行動を取ったかと思えばリザリーが俺らをちらっと見てボソッと呟き魔術発動させる。



「…なん、の…!」


「チッ…」



ハルトを閉じ込めるように電気の網付き格子のようなモノが出てきたが…



魔術を使ったおかげで間一髪逃げ切り、リザリーは舌打ちをして氷柱を投げた。



…初めて見る魔術だったけど…どういうやつだったんだろう?



敵を閉じ込めてなんやかんやダメージを与えるやつか?



俺らを見て規模を考えたって事は普通ならばもっと大きな形で捕らえてた系?



「フリージング!」


「…寒っ…」



ハルトの氷魔術でリザリーを閉じ込めるように氷の檻が現れ…壁や天井、地面までもが凍りつき気温が一気に下がる。



「ううっ…エルー、お願い」


「おう」


「おおー…温い温い」



吐いた息が白くなるぐらいの寒さにショコラは土魔術で箱を作ってエルーに渡し…



炎魔術でストーブのようにしてもらったので俺らの周りだけ温かくなった。



「にしても…ハルトは氷魔術だけで戦う気なのかねぇ?」


「そうじゃない?今のところ氷魔術しか使ってないし…」


「それか次のために温存してるか」


「俺としてはどっちも弱った状態で勝ってほしいけどな」



俺がリザリーを閉じ込めた氷の檻だか箱だかを見てボソッと呟くとリザリーとショコラが反応し、エリアが漁夫の利的な事を言う。

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