36
「じゃあ始めるか?」
「ハルト、合図!」
「おう、試合開始!」
エルーが俺らから離れた所に向かいながら聞くと、ショコラも反対側に離れた所に向かいながらハルトを指差す。
そしてハルトが叫んで二回戦が始まる。
「行くぞ!」
「こっちだって!」
「さあ予想開始だ、どっちが勝つと思う?」
エルーの愛剣(名前忘れた)とショコラの愛剣ココアがぶつかる中、ハルトが双子に問う。
「「んー…ショコラ(エルーシャ)さん」」
「…なあ…エルーがこんな所で魔術を使ったら大火事ってか、焼け野原になるんじゃね?」
「…いや、大丈夫だろ…そこらへんは分かってると思うぜ?」
双子が予想を口にすると俺は草原を見てそう聞くとエリアが笑いながら返してきた。
が、その瞬間…エルーとショコラが戦っている所で火柱が上がる。
「…大丈夫、か?」
「…一応周りの草には燃え移っては無いけれど…」
「あっ!」
俺が再度確認するとリザリーが微妙な感じで言い淀みマキナが何かを指差した。
「…なあ、コレ…どうする?」
「…消火した方が良いんじゃね?」
「…いや、もう少し様子を見よう」
「「わー…!凄ーい…!」」
火柱をかき消すように同じ場所から土の柱が伸び、かき消された?火柱の残骸?が地面に大量に落ちて草原の草を燃やして行く。
…分かりやすく伝えるならば…
火柱が壊れる、火種が周りに飛び散る、燃え広がる…かな?
その様子を見て聞くとエリアがそう提案するもハルトは制止する。
そして双子は楽しそうに二人の戦いを見ていた。
「やあっ!」
「なんの!」
ギイン!ギイン!と金属同士がぶつかる音と共に炎が出てほんの少し気温が上がったり、ほんの少し地面が揺れて土が盛り上がったりしている。
正にバトル漫画のような王道の戦いだが…
俺らは火事になったりして人が来ないか、の心配で戦いに集中出来ない。
…下手したら大火事になる可能性だってあるわけだし。
「…試合会場が森じゃなくて良かったかも…」
「…そうね、火事になったら戦いどころじゃなくなるもの」
エルーとショコラの激しい戦いを見ながらそう呟いたマキナにリザリーが賛同したように返す。
「いやまあ、ある意味火事にして逃げ場を無くすとか相手を弱らすとかの戦略も取れるけどな」
「…ソコがなんでも有りの難しい所なんだよな…」
「…確かに」
俺が火事を利用した作戦を話すとエリアが微妙な顔で呟き、ハルトが同意したように頷いた。
あ、一応ショコラやエルー達の動きに合わせて俺たちも動いてるよ?
戦いの邪魔にならないように、巻き込まれないようにちょこまかと動きながら観戦中。
…流石にずっと同じ場所で立ち止まって見ていたら危なかったり戦いが見えなかったりするからねぇ。
にしても火と土の争いか…
相性的には微妙だろうな、お互いに。
火は土に強いワケでもないし、土が火に強いワケでもない。
土砂ぐらい細かければ火を消せるではあるが、ある程度火力が強ければ土でも燃える。
お互いに弱くも強くもあるっていう微妙な相性。
まあだからこそ勝負がどちらに転ぶか分からない、って事にもなるけどさ。
ただ派手に戦い過ぎじゃね?と思うわ。
剣を使った勝負…というよりは魔術の勝負に近いかね。
「あはは!いっくよー!」
「…おいおい…いくらなんでもソレはやり過ぎじゃね?」
ショコラが魔術を使って地面から砲台のような物を作り出すと直径3mほどの岩を何発か空に飛ばした。
「…戦う前なのに…」
「ハルト、片方守れよ!」
「ああ、もう一人は任せた!」
ショコラの攻撃が何か知ってる俺らは双子の前に立ち武器を構える。
「シューティングロック!」
「来たわよ!」
ショコラが上に放った岩が物凄い速度でまるで隕石のごとく降って来てリザリーが合図をした。
「ちっ!」
「えいっ!」
「そらよ!」
…この技は範囲が結構広いので当然俺らの所にも岩が降ってくる。
一つは俺が無名で斬り裂き、一つはマキナがぶん殴って割り、ソレらの破片をエリアが魔術で別の場所へと飛ばす。
「おいコラ、ショコラ!俺らまで巻き込むんじゃねぇよ!」
「え?あ…あはは、ゴメンゴメン!」
俺が怒鳴るとショコラは今気付いた、みたいな反応をして反省の色なく謝った。
「お前…!ゴメンとか思ってないだろ!」
「うん、全然」
「隙有り…!」
ハルトの大声にショコラがそう頷くと砂煙が舞っている中、エルーが既に距離を詰めていた。
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