35
「一回戦はマキナの勝ちか…」
「「まあ予想通りだね」」
マキナ達と合流し、エルーが呟くと双子が当たり前のように告げる。
「む~…」
「勝ったんだからもう少し嬉しそうにしろよ」
納得いかなそうな不満そうに可愛く俺を睨みながら唸るマキナに、エリアが笑いながらそう声をかけた。
「エリアってアホだよね…」
「なんだと!?」
「マキナはていとの切り札を引き出そうとしてた…って気付いてないの?」
ショコラが呆れたように呟くとエリアは食ってかかり、そんなアホをバカにしたように問う。
「切り札…?七転抜刀の事か?」
まあ確かにあの木ぐらいなら無名でバラバラに出来たハズ…と、アホが顎に手を当てて検討違いの事を呟きながら考え始める。
「はぁ…ホント、アホ…」
「あはは…まあまあ」
ため息混じりにジト目でエリアを見たショコラにマキナが笑いながら宥めるように後ろから抱きついた。
「二回戦はショコラとエルーか…どっちが勝っても第二試合はマキナとだな」
「…まあ強い弱いで言えばマキナの方がかなり上だが、戦い易くはなったかもな」
「同感、ていとが相手だと逃げ回ったり姑息な手を使うから精神的に面倒で大変だもん」
もはや関係なくなった俺が投げやりな言い方で言うと、エルーもショコラも安心したかのように返す。
「そりゃあ今の弱い俺が強いお前らに勝つにはマトモな勝負は避けるしか無いからな」
「…弱い…か、だったらフル?で戦ってみたら?」
「「フル?」」
次の場所に移動しながら適当に返すとマキナが意地悪そうな笑みでそう聞いてきて、ハルトとエリアが不思議そうな顔で首を傾げる。
「あー…そういやハルトとエリアって今のていとのフルとか見てないんだっけ?」
「…フル?」
「マキナも言ってたけど…フルってなんだ…?」
「身体能力の解放よ」
ショコラの呟きで更に不思議そうな顔になったハルトとエリアにリザリーが簡単に説明した。
「「…なんだそれ?」」
「…今のテイトの状態を思い出せば分かる」
ハモった二人にエルーが一言で理解出来るような事を呟く。
「「あー…なるほど」」
「…お前ら仲良いなぁ…」
またしてもハモった二人に俺は若干ヒきながらそう漏らす。
「…って事は…お前、マキナ相手に手加減してたのか!?」
「なワケねーだろ、アホか」
「だが…どれほどのものなんだ?」
驚いたように聞いてきたエリアを一蹴するとハルトが興味津々といった様子で問う。
「「「「かなりヤバい(よ)」」」」
「「なんの話ー?」」
ショコラ達4人が同時にハモりながら返すと双子が不思議そうに話に参戦しようとする。
「…こっちの話だから気にするな」
「大した事じゃねぇしな!」
「「えー?気になるー…」」
ハルトとエリアがなんとか隠そうとするも双子は疑うように首を傾げた。
「俺らの中で誰が勝ち上がるか、ってのを話してたんだよ」
「「誰って…私はこの人!」」
俺の雑なごまかしを聞いて双子はハモりながら片方はマキナを指差し、片方はリザリーを指差す。
「やったー、期待されてるー」
「ま、当然よね」
「…ねぇ、エルー…ていとみたいに逃げ回って場外負けしてくれない…?」
適当な喜び方をしてる二人を見てショコラがエルーに耳打ちをして八百長を提案する。
「…お前がソレで良いなら、俺は構わないが…」
「…やっぱり無し!楽しい事を無駄にはしない!」
エルーが呆れたように賛成すると何故かショコラが却下というか提案を取り消した。
「ええー…アマゾネスめ…そんなに戦いたいか」
「当たり前じゃん、戦いって楽しいでしょ?」
「全然、弱者の俺には戦いの楽しさが理解できん」
あんな面倒な事の何が楽しいんだかね…
まあ強者だから、勝つ確率や可能性が高いからこそ楽しく思えるんだろうな。
そうこう話している内に次の試合会場へと到着。
移動時間はなんと30分。
場所はただっ広い草原。
「範囲はどうするか…よし、街道に出たら負け…でどうだ?」
「広くね?」
結構街から離れているとは言え、街道の所に行ったら部外者に目撃される可能性だってあるわけで…
街道を走ってる馬車とか車の人に見られたらどうすんの?
「街道ってここから何kmあると思ってんだよ」
「ソレもそうだな…」
俺とエリアの言葉にハルトは顎に手を当てて考え込む。
「もう場外負けとか無くしたら?」
「草原で場外って言うのもおかしいと思うぞ?」
「…そうか?じゃあ場外負けは無しという方向で」
結局考え込んだ意味もなく、ハルトはショコラとエルーの発言に従う。
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