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「学校ねぇ…なんでまた?」


「まあ…色々あってな、人間関係のアレだよ」


「最初はコイツにして、それから二年毎に理事長を交互に変えてたんだ」



俺の問いにエリアは察しろよ…とでも言わんばかりに告げて、ハルトは双子の右側を指差して説明を続ける。



二年毎って…なんで毎年じゃないんだよ。



…つーかリザリー達は特に反応してないから知ってたんだろうなぁ。



「で?」


「ちょうど最近4年目に差しかかり交代の時期になったところで、二人がどっちが理事長に相応しいか…で揉め始めたんだ」


「なるほど…ソレで試練、か…」



俺が続きを促すとハルトは更に説明を続け、その内容に色々と納得がいった。



…おそらく昨日双子が言い争ってた理由もどっちが理事長に相応しいかどうか、だったわけね。



「…納得できたか?」


「理由は納得出来たが、俺に面倒事を押し付けようとしたのは納得いかねぇなぁ…それに…まだ分からない事がある」


「…分からない事?」



ハルトの確認に文句を言いつつまだ疑問がある事を告げると首を傾げる。



「根本的な疑問だが…ソイツら、誰?」


「「「「「あ」」」」」


「あ…そういやお前にはまだ紹介してなかったっけ…」



俺が双子を顎で示して聞くと双子以外のみんなが、そういえば…みたいな呟きを漏らしハルトは顎に手を当てた。



「紹介?なに?エルーの妹的な近いやつなの?」



あんまり関係の無い奴なら、言ってなかった…とか知らせてなかった…とかだから…



多分他人だとしても関係的には近いんだろうよ。



俺とメイド7人+血の繋がってない子供達…みたいな感じで。



「俺の祖母の兄弟の孫らしい」


「…祖母の兄弟の…孫?」



ハルトの言葉にちょっとした複雑さを覚えそのままおうむ返しのように聞き返す。



「姉妹だったか兄弟だったかまでの詳細は分からんが、一応又いとこ的な親戚だとか」


「…又従姉妹ねぇ…なんでまた?」


「…両親が事故で亡くなって、親戚の間で色々とたらい回しにされた結果…最終的に俺の所に来た」



適当な感じのざっくりした説明にちょいとジョークという名のオヤジギャグを言ったが、微妙な顔でスルーされる。



「ふーん…厄介払いってか、面倒を押し付けられた感じか…」


「まあちょうどタイミング良く学校を買い取った時期と重なったからな…お前のおかげで金はあったから全寮制にして衣食住は面倒じゃなかった」


「俺のおかげって…死人に口無しで人の金を奪っといてそりゃねぇだろ」



面倒事を押し付けられて多少なりともイライラしてるので皮肉のオンパレードだ。



…なんか知らんが流れで標的がハルトからみんなに広がったけど。



何も言わないでただ聞いてただけなのに、皮肉の対象になってしまうとは…



まさに流れ弾。



『触らぬ神に祟り無し』ではなく…『触らぬ神に祟られた』っつー、とばっちり。



「ちょっと、なんで私達にまで被害が及んだの?」


「お前らが後ろめたい事をしてるからだろうが」


「…てゆーか、『俺の金』って違くない?私達のおかげで金になったんだから…正当な対価っしょ?」



リザリーの苦情にそう返すとショコラが何故かギャルみたいな言い方をしてきた。



「その元はお前らのモンか?…じゃなくて、言い争うとズレて長引いて忘れそうだからソレは置いとこう」



俺は言い返すと首を振ってズレそうになった話を元に戻す。



それに同意だったのかエリアとマキナは開いた口をそのまま何も言わずに閉じる。



…一応ハルトに協力するにしろ、あの双子について必要最低限の情報は知っとかないと…



こんな無駄な言い争いで無駄な時間を過ごして無駄な労力を使いたくない。



「とりあえず質問すんのも面倒になってきた…その双子と学校の簡単な基本情報を寄越せ」


「ああ、じゃあ先ず自己紹介からだな」


「アーケイン・ニルフレード、12歳」


「シークイン・ニルフレード、12歳」



俺が投げやりに言うとハルトは双子を俺の前に連れて来てそう告げ、双子の自己紹介が始まった。



「…ニルフレード、ねぇ…」


「一応名義上というか書類上は俺の親の養子になっているからな」


「はっ、エルーと同じく突然美少女の妹が出来たんかい」



苗字というかファミリーネームを呟いたらそう説明してきたので鼻で笑う。



…なんなんだコイツら…どこの主人公だよ。



流石は主人公属性とでもいうべきか…俺の家族達と似たような状況を起こしやがる。



「…まあ産まれたのはナターシャが早くても、状況的には俺の方が早いが」


「俺の中ではクレインが早ぇよ…んじゃ次」



またもや微妙な顔で呟いたハルトに俺は一蹴して話を進めるよう促す。

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