39

ある意味チート染みた威力になってる炎魔術で植物型の魔獣を倒しながら進む事、40分。



「うわ…凄い霧…」


「…前が…見えない…」



薄い霧が出始めたかと思えば5分と経たずに一気に濃霧へと変わる。



「…コレは、マズイな…」



俺ははぐれたり迷ったりする可能性を考えて呟き、近くの木を刀で斬り倒す。



「うわっ!な、なに…!?」


「!?」



まさか俺が木を斬り倒すとは思っていなかったのか女の子と少年は木が倒れた音に驚くと直ぐに振り向いた。



「…コレを」


「?枝?」



バキッと折った枝を渡すと少年が不思議そうに首を傾げる。



「…地面に、目印になるモノを書くといい…」


「…なるほど、迷わないため?」



少年にそう告げるとなぜか女の子が感心したように聞いてきた。



「…ああ、同じ場所をグルグル回らないためだ…」


「分かった」



俺がそう言うと少年は直ぐに地面に大きな丸を書き始める。



「…とりあえず、ココがスタート地点だな…」


「…もし、逸れた場合は…ココに集合?」


「おお!メルト、ナイスアイディア!」



女の子が疑問系で聞くと少年は手を叩いて声を上げた。



「…倒れた木、地面の丸…」


「目印としては十分だね」



少年は俺の呟きにそう返して濃霧の中を進み出す。



「うわっ!?…この…!」


「!?…っ…!」



流石に濃霧の中で襲われたらたまったモンじゃないのか、少年はもとより女の子も植物型の魔獣の攻撃を避け切れてない。



俺?…俺は普通に避けれるよ?だって気配は普通に感じるし。



「…くそっ、濃霧さえ晴れれば…!」



一応俺は少年や女の子が攻撃される前に炎魔術で敵を倒す事が出来たりする。



だけどもそれをすると少年のためにはならない。



そして、女の子だけにそうやると怪しまれたりもするので…



少年と女の子が地味に植物型の魔獣の攻撃を食らって苦戦してる中、俺だけ無傷っつー状況に。



俺は植物型の魔獣が近づいて来ると弱めの炎魔術で燃やし、後は少年達が倒し終わるのを待つ。



ものっそい無駄な時間を過ごしてるような気がするけど、多分気のせいだ。



…そう思いたい。



いや、そう思わないとやってられん。



「あー!もう!一気に駆け抜ける!」


「…うん」



見え辛い場所で敵と戦うこの状況にストレスが溜まったのか…



少年はいきなり叫んで走り出す。



女の子も一歩遅れて走り出し、俺はさらに一歩遅れて少年を追いかけるように走り出した。



濃霧で視界が遮られてる中で走り、木や魔獣にぶつからないというのも凄いが…



女の子が少し先を走ってる少年を見失っていないというのも凄い。



俺は気配で大体分かるから少し前の女の子とそれよりも前の方に居る少年から逸れる事はないけど。



「…あれ?」



走る事およそ15分。



なぜか俺たちは森の入口へとリターン。



直線的に真っ直ぐ走って曲がった記憶など無いのに、なぜか振り出しに戻る。



…すごろくのトラップにでも引っかかったのかね。



「…ココって…」


「…入口、だな…」


「…戻ってきた…?」



少年が不思議そうに辺りを見渡しながら呟いたので、俺が少し考えた演技をして返すと女の子も不思議そうに呟いた。



…うーむ…迷いの森では無いハズなんだが…



ってかなんで森の入口にまで霧が出てんの?



入って来た時は晴れてたのに、強制的に戻されると霧がかかってる不思議。



「…とりあえず進もう」


「…うん」


「…そうだな…」



アホな少年は霧がかかってる事を疑問に思わずに森を進み始める。



「…そこ、右だ…」


「…え?」



一応用心しながら進んでると霧が濃くなってきた辺りで俺の直勘が働いた。



「…何かが、通り過ぎた…」


「分かった、行ってみよう!」



俺の直勘を説明する気など皆無なので適当に嘘を吐いて誘導する。



「…左だ…」


「分かった!」


「…何も、見えない…」



霧が徐々に濃くなる中、何かを発見した振りをしながら少年達を誘導すると女の子が怪しげに呟く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る