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「ガっ…!?」



戦いが始まって直ぐに俺の無詠唱の雷魔術をモロに食らいバンダナが倒れる。



…まあ、ね…素手や剣で戦ってた奴が急に魔術を使うとこうなるよ。



一応手加減したから大ダメージとはいかないだろうが…



それでも一日は立てないぐらいのダメージぐらいはいってるかも。



少しの煙を出しながら倒れてるバンダナから視線を外して三人のサポートに回る。



「えっ!?もう終わったの!?」


「…瞬、殺…!?」



俺からの援護が予想外だったのか少年と女の子が驚いたように振り返った。



…まさかこれで終わりだとは思わないけども…モロに食らったしなぁ。



未だに倒れてるバンダナをチラッと見て、また合成魔獣に戻る。



流石に4対3でこっちが優勢なので結構早く合成魔獣を倒せた。



「くっ…中々、やるじゃないカ…」



俺たちが合成魔獣を倒すまで待っててくれたのか…



それとも意識が飛んでたのか分からないが、バンダナが立ち上がる。



「…立ち上がった…?」


「そんなにコレが欲しいのかな?」


「…なんの目的で欲しがるんや?」


「お前達に言う必要は無イ」



本気で戦うつもりなのかバンダナの雰囲気が変わった。



「…来る…!」


「…なっ…!?」



女の子が警戒するとバンダナは一瞬で俺たちとの距離を詰めておっさんに斬りかかる。



なんとかおっさんは棍棒でガードするも半分以上刃がめり込む。



「脱力せヨ」


「が…!?」



バンダナがおっさんに命令すると棍棒を離して身体を斜めに斬られた。



「!?ヨディさん!」


「ククク…マズは一匹ダ…!」



おっさんを斬ったバンダナの表情が凶悪になり、右目に魔法陣が浮かぶ。



「…なっ…!顔が…変わった…!?」


「おっト…気を抜いタら直ぐニ影響されテしまうナ…」



女の子が驚くとバンダナが右目を閉じて手で押さえて呟く。



すると元の飄々とした感じの顔に戻る。



…魔眼の力を解放すると理性のタガが外れ、持ち主の本性や本能が出ると聞くが…



どうやらバンダナの核というか根っぽいアレは戦い大好きっ子らしいな。



…まあバンダナに限らず人間なら誰しもそういった本能や本性を持ってるからねぇ。



生物なんだからしゃーない。



「さア…少しは楽しまセてくれヨ…?」



バンダナはニヤリと笑うと押さえてた手を下ろして右目を開く。



「…ライトニング…」


「当タルワケ…無いだロ?」



俺の雷魔術を素早いステップで全て避けて女の子との距離を詰めた。



「…くっ…!」


「メルト!」


「まずは小手調べト…行コうカナア!!」



ギイン!ギイン!とバンダナの持つ少し長めの剣と女の子のナイフがぶつかる。



バンダナのやつ…影響されまいと頑張っているらしいけど…



地味に半分ほどの影響を受けてるっていう。



片目でソレなら両目の全部解放したら影響に抗えないんじゃねぇの?



よお考えたら、アイツが契約した悪魔…特級ぐらいだったりして。



悪魔将軍クラスなら契約とかしないで操るか取り憑くとかしそうだし。



女の子とバンダナの打ち合いを見ながら考えを巡らせつつ、魔術を発動できる隙を窺う。



「…そこだ!」


「甘いナ」



隙を見つけたらしい少年がバンダナに剣で斬りかかったが余裕で避けられる。

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