26
「…そろそろ、話は止めた方が良さそうだな…」
長い廊下の奥におそらく神殿の最深部であろう祭壇が見えるので、俺は警戒した風を装い話を切りあげる。
「…結局動く石像以外なんの罠も無かったね」
「…その石像も、バラバラ…」
「体力が温存できて良かったでぇ…しかし、こういう所は最後の最後で…って可能性もあるんや」
安心させての落とし穴…とかな。
俺だったら最初に上から降らせて…注意が上に向いた瞬間に落ちる罠を仕掛けるけど。
…まあ地面を見る限り落とし穴とかのトラップがあるようには見えないが。
「…そうだな…警戒するに越した事はない…」
一応おっさんの意見に賛同して真ん中を避けるように端から進む。
「…ほウ…?もう追イついて来たカ…」
結局何も仕掛けられておらず警戒するだけ無駄だった俺らに気付いてバンダナが振り向く。
「まア…追いつイて来た所デもう遅いガ…」
バンダナが何かしらのボタンを押したのかガチャ!という音が聞こえてきた。
「「「!!?」」」
するとゴゴゴ…!とバンダナの後ろの女神像?が沈み始める。
…こりゃアレだ、展開的に黒騎士が持ってた指輪をなんかの窪みに嵌めたんだろうよ。
「なるほド…こういう仕組みニなってタのカ…」
女神像が床の下に完全に沈むと空いてた穴にシャッター?的なのが閉まる。
シャッター…というより床と同じ素材でできたギミックだろうが。
床が平坦になると奥の壁が上に動き出した。
…なんだこのからくり屋敷みたいな神殿は。
無駄にギミックが凝ってんなぁ。
壁の向こうには歯車が組み合わされて作られたような人型のちゃっちいロボットが立っている。
「シ、侵…入者…ハ、発見…コ、コレヨリ…セ、殲滅シマス」
片言の合成音声みたいなのが流れたと思えばギギ…と軋む音を鳴らしながら動き出した。
「…まア小手調べと行くカ」
バンダナが指を鳴らすといきなり三体の魔獣が現れる。
…アレは…まさか…操者の合成魔獣…?
ゲームの展開でいえば俺らがあのロボットと戦うんだろうが…
この場合の侵入者ってのはバンダナも含まれているらしい。
だからおそらく俺らがあのロボットと戦う前にバンダナが倒すかも。
そうじゃなきゃロボットを見た時点で旧時代の遺物でどっかに空間移動してるハズだし。
とりあえず臨戦体勢を取ってる俺らの前で合成魔獣とちゃっちい歯車ロボットが戦い始めた。
「ふム…中々強いナ」
僅か5分ほどで二体の合成魔獣がやられ、あと一体も時間の問題だろう。
「…だガ、その程度カ」
バンダナはがっかりしたように呟くと俺たちの所に向かって歩き出す。
「「「…!!」」」
俺以外の三人がこっちに向かって来るバンダナに対して警戒したように武器を構える。
「…アレは失敗作でさエ倒すのに時間ノかかる雑魚ダ…戦ってモつまらんかラお前達にやろウ」
警戒した俺たちの横を何も気にせず余裕で通り過ぎて入り口の所で止まった。
「なニ、お前達ガその程度で負けルようなラ自分でやるサ」
まさかの面倒事を人に押し付けといての自分は側から観戦するっていう。
お前は一体何様だよ?って一瞬イラつくが、ぱっと見あの歯車ロボットは少年を鍛えるには丁度良さそうな強さっぽいのでここは放置する事に。
「舐めやがって…!みんな、俺はアイツとやる!だからアレは…任せた!」
何故か少年は俺の思惑に反しバンダナの所に向かって走ろうとする。
「…待て」
「ぐっ!?ごほっ!ごほっ!」
とっさに少年の服の襟首を掴んで引っ張り止めた。
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