24

罠の心配をしながら慎重に進むも壊れた石像がある以外は特に何も起こらない。



吊り天井も落とし穴も壁が迫ってくる部屋も…



大岩が転がってくるとかの罠も一切無かった。



おそらくこの神殿に仕掛けられてる罠は動く石像だけなんだろう。



…もしかしたら何も隠されてる物が無いのかも。



普通に何かを祀るための建物だったり…



「…罠とか無いね」


「油断は禁物やで、どこに何があるか分からへん」


「…でも…少し、おかしい…」


「…ああ、もしかしたら…普通の神殿という可能性も…」



普通の神殿ならばそんな大掛かりな罠は必要ないからな。



来客が毎回毎回大掛かりな罠を避けながら…ってのもおかしいし。



第一、罠ってのは基本的に一回引っかけたらその都度セットしないと連続では使えないぞ。



こんな住居の無い場所でそんな手間のかかる物を仕掛けるってのはちょっと…



「普通の神殿にこんなもんがあるかいな!」



おっさんはバラバラになってる元戦士の石像だった石を指差す。



「確かに…」


「…警備のため、とか…」


「…普通の石像を、魔術で動かしてるかもしれないな…」


「えっ?そんな事も出来るの?」



俺の呟きに少年が反応する。



「…ああ、土魔術の使い手なら…おそらくは…」



ショコラなら石像を動かす事ぐらいワケねぇだろうよ。



養成学校の頃は、アート作品!とか言ってよく地面から石像だか土像だか造りだしてたし。



しかもグラマーな半裸美女の像。



流石に胸とか腰にはタオルみたいのを巻いてるような感じだったが。



ポーズは何がいい?って土像だか石像を動かしてた事もあったんだから…



多分普通に動かす事ぐらいなら楽に出来るハズ。



…あとは…操作系魔術に特化したやつ…とか。



「へえー…魔術って色々出来るんだ…」


「いや…そう万能でもない…」



関心したように呟いた少年に首を振って否定した。



「え?」


「…魔術には系統があって、だな…」



通路を進みながらリザリー達から聞いた事と調べた事を思い出しながら説明する。



「系統…?火とか水とかの属性って事?俺は確か…火だったような…」


「違う…攻撃、防御、強化、治癒、操作の事だ…」



魔術師のほとんどが攻撃系の魔術に特化してるので防御や強化、操作系に特化した奴は極少数だが。



防御系なんて魔術によるシールドや結界を作って敵の攻撃を防ぐだけだから需要なんて無いに等しい。



強化系にしても他人に魔力を渡すか身体能力を強化するぐらいだし…



常に誰かの補助に回るワケだからパーティを組まないと戦えないって事になり…



戦闘力なんて無いに等しく、基本的に役立たず扱いされてしまう。



補助がある方が戦い易い、って思う奴もいるかもしれんが…



正直そういう奴らと戦うとなると普通、補助から真っ先に潰すんじゃね?



補助が無いと戦えないよ…って奴なら速攻でゲームオーバーだわ。



じゃあ特化しなければ良いじゃん。って普通の人なら思うだろ?



ソレもそうだ。



なんで特化しないといけないの?って答えは簡単。



それほど使えるようになるのが難しいから。



逆に攻撃系魔術はどんなバカでも魔力さえあれば使えるぐらい難易度が易しい。



だからほとんどの魔術師は攻撃系魔術に特化した。



リザリーやマキナにエルーは魔力の属性的にたまたま強化系が使えるような火と雷で、なおかつ才能があったから使えるワケで。



まあショコラとエリアは属性的に戦いの補助をする事もできるけど。



…リザリーとマキナは雷属性で才能があるからか、まだ使えると気付いてない治癒も含めて全ての系統魔術が使えるんだよなぁ…



ショコラ達も攻撃、防御ぐらいなら特化ばりに使えるし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る