10

「止めろと言うとるやろ!」



おっさんは叫びながら手に持っていた棍棒で黒騎士に殴りかかった。



「ふん、ヌルいな」


「なっ…!」



黒騎士は背中の大剣を掴むと振り返りもせずにおっさんの棍棒を受け止める。



え?いやいや、なんで驚いてんの?



あんな叫び声を上げながら殴りかかられたんなら普通に見なくてもガードするぐらい出来るだろ。



「邪魔だ!」


「ぐっ…!」



大剣の一振りを棍棒でガードするも力負けして吹っ飛ばされた。



…また俺らに背を向けた…戦闘の最中なのに何やってんだ?



俺は戦闘員?達に地味に魔術で攻撃しながら黒騎士の行動を観察する。



うーむ…ココからだと背中しか見えねぇな、ちょいと移動するか。



「…コレが鍵か…」


「なっ…!まさか封印を!?」



ようやく黒騎士が何してるか見える位置に来たのに…タイミング良く?悪く?なのか作業は終わったようだった。



鍵ってなんだ?と思い、振り返った黒騎士の手元を見ると何やら指輪のような物が。



今、封印って言ってたよな…?



つー事は…黒騎士が持ってんのは古代兵器に繋がるナニカの鍵、って事になるよな?



…おう、コレは…もしや…アレか…?



古代兵器はもう見つけてるからソレを手に入れるための計画を実行中…的な感じ?



だとすると…うーん…計画が難航してたとしても、おそらく半分以上は進んでるハズ…



「ソレを…返しぃ!」


「ふん、返して欲しければ力づくで奪ってみろ」



黒騎士は大剣を片手で軽々と構えておっさんと向き合う。



ぐむぅ…どうするべきか…指輪を取り戻した方が良いのか、まだ泳がして置くべきか…



俺の予想では指輪を取り戻すと少年が預かる事になるだろうと思うが…



相手に持たせるのとこっちが持つの、どっちが楽かねぇ?



こっちが持ってると揃うタイミングは大方調整出来る、が指輪目当てで結社メンバーからの襲撃が…



「うおおぉ!」


「ふん!ヌルいわ!」



考えてる間におっさんと黒騎士が戦い始める。



そんでもって戦闘員?の数もかなり減っていた。



…考える時間も無いのかよ…!くそ、もうなるようになるさ!



結構切羽詰まった状況になり考えるのが面倒なので丸投げする。



そんな時に発動した適当な魔術を食らった戦闘員?が倒れて残るは黒騎士のみに。



「…やられたか、まあいい…元から貴様らごとき我一人で十分よ!」



4対1の圧倒的不利な状況にも関わらず黒騎士は臆する事無く、逆に楽しむように威圧してきた。



「今回はさっきのようにいかないぜ!覚醒の技術…サイコ・ブレイブ!!」



少年は叫ぶや否やいきなり俺が伝授した技を使う。



「ヌルい…ヌルいわあ!ヌル過ぎる!!」



が、黒騎士には全く通用しない。



4対1という圧倒的有利だったにも関わらず…



たった10分で動けるのが俺と女の子だけになるっていう。



因みに俺は後方から攻撃してたからダメージゼロ。



「うそ…だろ…」


「こ、こんな強い奴がおったなんて…!」


「くっくっくっ!我は黒騎士だぞ!世界中で暴れ回り、白騎士でさえ倒したあの!有名な黒騎士だぞ!貴様らごときでは相手にもならんわ!」



少年達が悔しそうに呟くと黒騎士が自慢するかのように叫ぶ。



へぇ…世界中で暴れ回ってたんだ…ってアレ?なんか引っかかるぞ…?



白騎士でさえ倒したって…どっかで…うーん…



「な…なに…!…あの黒騎士やと…!?だが、あの黒騎士は二年前に姿を消したハズ…!」


「ふっ…だが我は現にこうして存在しておるではないか!この強さこそが黒騎士の証!」



黒騎士の言葉に引っかかりを感じ考えてるとまだ勝負がついてないのに勝ち誇ったかのように笑い出す。



…ああー!思い出したあ!!黒騎士ってアイツか!



「…そうかそうか…お前か…復讐はどうした?」


「なに…?何をワケの分からん事を…貴様など知らぬ」



一瞬キャラを忘れ、素に戻って質問すると予想外の返事が返ってくる。



「…なに?…ならば、白騎士はどうした…?」


「倒したと言ったであろうが!」



……は?待て待て、話が合わないぞ?どういう事だ?



キャラを今のに戻して質問するも俺の記憶とは食い違う返事が返ってきた。



…………そういう事か…



「はっ、ははっ…ははははは!なるほど…!お前…偽物か…!」


「なっ…!?」



俺が思い至った事に笑いを堪え切れず言うと黒騎士は動揺したように絶句する。



「くくっ…どおりで…白騎士を倒した、とか言ったな?…ソレは不可能だ」


「な、に!?」



笑いを堪えながらキャラを戻しつつ黒騎士にそう言うと予想外、といった感じで驚いた。

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