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「…俺は昔、奴に会った事がある…その時に聞いたよ…白とは対になる、と…」


「なん…だとぉ…!?馬鹿を言うな!」



馬鹿を言うな、って言われてもなぁ…



多分世界中で暴れ回った黒騎士って俺が作った奴だと思うし。



ついでに白騎士も。



だから目の前のコイツは偽物だろうよ。



俺が作ったあの黒騎士なら白騎士を倒すなんてありえねぇ。



だって…白騎士は黒騎士の復讐に巻き込まれた関係の無い奴らを治すため、に作ったんだから。



元々の黒騎士?の中身は元円卓の騎士のおじさんだったんだよね。



家族が惨殺されて、復讐のための旅に出たはいいけど、途中で病気にかかっちゃって…



死ぬ直前に会ったのも何かの縁だ、つー事で俺の実験に使ったワケ。



血を操る能力を使った人体実験の結果…魔術が使えるようになって生き返った、と。



元々魔術が使えないのに円卓の騎士になるぐらい強かった人が魔術を使えるようになったら…ねぇ?



まあ剣術に特化した死体と魔術師の死体を組み合わせて魔法剣士にする、っつー実験自体は成功したワケだけど。



そんなこんなで怨みを晴らすための力と肉体を手に入れたおじさんが、世界中で暴れ回って黒騎士っつー異名になった?んだろうよ。



あ、なんで白騎士を作ったかと言うと…



その時は既に調停の使者だったから。



あとは治癒、再生魔術の使える聖騎士?って奴を作れるか実験したかった、ってものあるけど。



ソレも魔術師の死体と剣術に特化した死体を組み合わせて作ったモノ。



一応黒騎士は復讐する相手以外は殺さない、って主義で…



だからどんなに暴れても死人は出ないから全部白騎士が治せる、っていう感じ。



プラマイゼロ的な?



…ま、さっきのおっさんの話を聞くに、黒騎士の復讐は成し遂げられたハズ。



白も黒も復讐を遂げるまでの命にしてたから。



姿を消したのは…そういう事でしょ。



かりそめの記憶だったにしろ、未練無く消えれたなら良かったんじゃね?



まああのおじさんの魂自体は志半ばの復讐を未練に思って幽霊になってるかもしれんが。



にしてもあのおじさんも可哀想だな…こんな雑魚が偽物として我が物顏で黒騎士を名乗ってんだから。



「…はぁ…黒騎士が、己の尻拭いをしている、白騎士を倒す理由が、どこにある…?」


「ぐ…!ぐぅ…!黙れ!」



ため息を吐きながらそう言うと一歩前に出て威圧してくる。



「…そもそも、お前は勘違いしている…黒騎士が暴れていたのは、復讐のためだと聞いた…己の力を見せびらかせるためなどでは、無い」


「黙れええ!!」



やれやれ…と肩を竦めながら続けると黒騎士が叫びながら走ってきた。



ちょうど良い、あの不運で不幸で不憫なおじさんのために一肌脱いであげますか。



「………憑依、ランスロット」



適当に意味の無い呪文を呟いて魔術を発動させたと思わして、無詠唱の雷魔術で身体強化をした。



この身体強化は俺じゃ長時間維持出来ない上に疲労とか負担がかかるが…



直ぐに終わらせるから大丈夫っしょ。



「な…!?」



黒騎士の振り下ろした大剣を抜き身の刀で受け止める。



片手で軽々と受け止めたからか黒騎士は驚愕した。



…いや~、やっぱ人って本当に驚くと『な…!?』ってしか言えないんだな。



「…本物の力を思い知るが良い…」


「!がっ…!?」



大剣を弾いて腹に一撃食らわせると凄いスピードで吹っ飛び壁に激突する。



真っ二つにしなかったのはせめてもの慈悲だよ…



なんちゃって、古代兵器を手に入れるまでは生きててもらわないといけないんだよね。



「…くっ…」



俺は身体強化を解いて消耗が激しいですよー…的な演技をするため地面に膝を着く。



「い、一撃で…?」


「ほ、本当に強かったんやなぁ…」


「…大丈夫…?」



少年とおっさんが呆然とする中、女の子が俺に手を差し伸べてきた。



「…ああ、だが…この技はやはり、消耗と反動が激しい…」



いかにも疲れてますよー…な演技をしつつ女の子の手を取って立ち上がる。



「ぐっ…!このダメージは…撤退せねば…!」


「ま、待て!」



ガラ…と壁の破片を崩すように立ち上がった黒騎士はおっさんの静止の叫びを無視して姿を消した。



「なんてことや…!鍵が…!」


「まだ遠くには行ってないハズだ!急いで追いかければ!」



少年はアホみたいな事を言って来た道を戻るように走り出す。



…いやいや、アレってどこで○ドア的な空間移動だからもう近くには居ねぇよ。



「…先に、行っててくれ…」


「…分かった」



内心呆れつつも何も言わずに女の子を先に行かし、おっさんに肩を貸して追いかけるように歩く。

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