28

発言と内心が全く正反対の中、俺は無銘を抜いて構える。



「…刀か…剣帝と呼ばれる俺に対して刀剣で挑むとは愚かな奴だ…」



ボソッと呟いたかと思えばかなりのスピードで間合いを詰めての振り下ろし。



「剣帝ねぇ…でも所詮は師匠の師匠たる日比谷よりは弱いんだろ?」



いかにも日比谷と何かしらの縁がありますよー…という嘘を吐きつつ軽々と受け流す。



「…やはり何かを知っているようだな」


「聞きたきゃ力尽くで聞いてみな」



静かな港にギイン!ギイン!と剣と刀が激しくぶつかる音が響く中で余裕そうな態度を見せた。



「…ふん、元よりそのつもりだ!」


「…ん?うおっと」



一撃目が避けられる事が前提の攻撃…二撃目の素早い切り返しで斬る技、まさかの燕返しに一瞬ビビったが余裕で回避。



うえぅ…巌流佐々木小次郎が得意とした燕返しかよ…異国独特の技なんだからきっと日比谷からの継承?だろうな。



「…燕返しってのはなー…こうやんだよ」



剣帝の剣を弾いて両手で無銘を握って振り下ろす。



当然避けられたが素早く手首を捻って斜め下から切り上げる。



「なっ…!」



バックステップで避けられたがまた手首を返し距離を詰めて斜めに袈裟斬り。



体重の乗った袈裟斬りもギイン!と剣でガードされたがその動きを利用してクルリと回転してからの切り上げ。



「ぐ…!」



流石に四撃目は避け切れなかったらしく掠った。



「どうだ?モノホンの燕返しは、よ」



手首の返し、腰の捻り、身体の回転、握り変え、踏ん張り…



全てを駆使して敵に当たるまで斬り続ける事が燕返しの真髄なんだよ。



あの四撃目の切り上げで当たらなかったら、身体が流れないように踏ん張り右手首を返して握りを変えそのまま切り下ろしてたし。



…偉そうに言ってるけど、多分日比谷がこの技使ったんなら確実に二撃目で仕留めるんだろう。



二撃目で確実に仕留められないなら未完成だ、的な事を言いそうな気がするんだよね。



「…ふっ、面白い…久しぶりに全力を出せそうだ」



剣帝は距離を取って呟くと構えを変えた。



「…頼むから死ぬなよ」



いかにも、さっきまで殺さない程度に手加減してましたー的な事を言うと…



スッ、スッ… と流れるような素晴らしい動きで距離を詰めてくる。



うわぁ…凄ぇ足捌きだ、しかも緩急付けてるから狙いも定めにくい。



「衝突」


「おうっ」



急に目の前から斜め下にしゃがみ込んだと思えば、身体のバネを生かして飛ぶようにかなりのスピードで突いてきた。



なんとか無銘でガードするも衝撃が強過ぎて少し後ろによろめく。



「まさか防がれるとは…ならば」



剣帝は意外そうに呟くと剣を鞘に納める。



「ははっ、抜刀術…居合か?受けてやるよ」



俺も無銘を鞘に納めて構えた。



「…行くぞ!」



少しの間が流れた後に剣帝が今までの比じゃないほどの猛ダッシュで一気に距離を詰める。



「ふっ!」


「おっと…せいっ!」



かなりの速さで抜刀…抜剣?しざまに斬りかかってきたが、半歩下がってギリっギリで剣を避けて俺も抜刀しざまに斬りかかった。



「ぐっ…!」



なんとか無理な体勢で避けようとしたが…



やはり無理な体勢だったからか避け切れずに掠る。



…元々抜刀術とかの技は異国のモノなんだからその出身の奴には技術的に勝てなくても仕方なくね?

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