第15章

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「存分に楽しませてくれよぉ!」



破壊者、とか良い大人のクセにちょっと痛い事を平然と言ってのけた男は吠えると同時に目の前に現れる。



男の動きはかなり早く、普通なら瞬間移動or消えた!?と思うだろう。



だが残念ながら俺は普通じゃない。



動く瞬間は捉えれたし、動きも先読み出来た。



あの程度の速さならアクビしながらでも十分に反応して対応出来るんだよ。



まあ今回は全くなんの反応もせずに突っ立ったまま動かなかったが。



身体で反応する代わりに無詠唱で魔術を発動させて置いたから。



「っ!?」



『何故か』ソレに気づけた男は俺に当たるスレスレで拳を止める。



「ふっ…面白ぇ事するじゃねえか…」



バッと素早く後ろに下がるとニヤリと笑う。



あのまま俺の腹に拳を減り込ませば感電してたモノを…惜しかったか。



「…予想以上に勘が鋭い…」



俺は首に手を当てて骨を鳴らしながらそう呟いた。



「くっくっく…貴様、魔術師だな?その髪はカツラでごまかしてるのか…」



俺じゃなかったら危なかったぜ、と男は笑いながら無駄に分析してくる。



…初対面の奴らは勝手に勘違いしてくれるから後々の戦いが凄く楽になるんだよね。



俺の戦いの本質を見抜ける奴なんて幼馴染のあいつらしか居ないだろうし。



「相手が魔術師ならソレ相応の戦い方ってモンがあるんでな…」



男は歯を剥き出しにして笑うと下っ腹の前で握った手をクロスした。



「…すー…コォォォォ…!!」



息を大きく吸って吐き出すとなにやら蒸気のようなオーラ?が男の周りに現れる。



…もしかして丹田呼吸とか言われるやつか?



にしても…太極拳の極技とも言われる『気』を魔力で代用する、なんて発想が凄ぇな。



あのマキナでも太極拳はマスターしたが極技である『気』は習得出来なかったのに。



…あ、因みに俺も太極拳自体はマスターしてるよ?



だから多分コイツと普通に戦えば圧勝出来ると思う…『普通』に『村人B』として戦えれば。



つーても太極拳の極技なんて使える武人は極稀だからねぇ。



俺が知ってるだけで二人…



一人は俺が暗示をかけてまで抑え込んだ魔物の力を見破った事のある唯一の人間で…



『気』を使ったモノホンの気功術で人々の病気や怪我を治しているやーつ。



もう一人は太極拳の現総帥であるおじいちゃん。



90超える高齢にも関わらず未だに門下生との実戦形式の組手では無敗らしい。



「…コレで万に一つの可能性も無くなったな…」



男はいかにもなオーラ?を全身に漲らせながらニヤリと笑う。



…魔力は目に見えないハズなのになんでアイツの擬似気は薄っすらと見えるんだ?



何故か男の周りにかなりクリアな白色のオーラ?が見えるんだが…



遂に俺もスピリチュアルな世界のドアを開いちゃっ…



「どらぁ!」



た系?と続く前に男が攻撃を仕掛けてきた。



ブンッ!と大きく腕を振ると衝撃波が地面を抉りながら一直線に俺に向かって来る。



「…ふむ…」



気による遠距離攻撃か…となると目眩ましで後ろを取るかもしれんな。



衝撃波には土魔術で5重の土壁を作って対応し、接近の対策として風魔術で土煙を巻き上げた。



一応土煙で居場所を特定しづらくしたが念のために土魔術で凹んだ地面に寝転ぶ。



…その間わずか3秒。

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