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「俺らの飯は……あった、牛丼とうな重とのり弁があるけど何が良い?」



分けられて置いてある箱の中から三種類の弁当を取り出して聞く。



「私は牛丼で」


「じゃあ俺はのり弁で」


「うなじゅう??」


「鰻の蒲焼が上に乗った弁当かな?美味いよ、ほい頼む」


「ん」



マキナに弁当を渡すとIHよろしく無詠唱で魔術を発動させて温めてくれる。



「「いただきまーす」」


「?なんですの?その掛け声?」


「食べる時のまあ感謝?的な?」


「なるほど…イタダキマス?」



なぜか俺らに見習って?パイプイス(座布団敷き)に座りそう言う。



「うむ、ファーストフードもいいけどやっぱり弁当も美味いな」


「このうなじゅうとか言われるお弁当美味しいですわ」



全くわざわざ異国に、しかも忍者達に気付かれないように最南端の場所まで買いに行った甲斐があるってもんだ。



うな重に至っては皇女殿下が食べるだろうと予想して老舗でのテイクアウトだしな。



あのうな重ひとつで25,500円もしたんだぜ?



こののり弁やマキナの牛丼なんて250円だったんだから…約102倍の値段やぜ?



俺もそんな高級なん食った事ねぇんだからそりゃ美味いに決まってるわ。



…皇女殿下と俺らの格差の凄さ。



まあでも250円のす○屋の牛丼だってほっと○っとののり弁だってめっちゃ美味ぇべ?



吉○屋やほっか○っか亭も美味しいけど…今回はちょっと値段的に…ね?



金持ちには分からんかも知れんが30円の差ってかなりデカイんだぞ!



コレをみみっちいとか思ってる奴はバカ以外あり得ない。



何故なら節約の大事さを分かって無いから。



別に金が惜しいなんて微塵も思ってないからね?



色んな意味で、色んな分野で無駄を省くのって生き抜く上で凄く大切で凄く重要な事だし。



…決して俺が小さい頃から親に節約節約言われて、そういうのが染みついてるわけじゃないよ?



「ねぇ、ご飯がタダで貰えるってホント?」



変な事を考えながら弁当を食べ終わるとクソガキ的な子供が四人やってきた。



「え?…ええ」


「身寄りの無い子供や社会的弱者の人達はな、お前らはダメだ帰れ」



皇女殿下が立とうとするのを制して断り帰るよう促す。



「えー!なんでだよー!俺たちだって身寄り無いんだけどー?」


「お前らは社会的弱者じゃない、言ってる事は本当かもしれんが…孤児院かどっかで毎日ちゃんと飯は食えてるだろ?わざわざ冷やかしに来んな」



俺はそう言ってクソガキ達にシッシ…と追い払うように手を振る。



「ど、どうする?聞いてた話と違うぞ」


「あ、慌てるな、まだ手はある」



本人達はコソコソと喋ってるつもりらしいが丸聞こえだ。



「俺ら実は結構前から孤児院から追い出されて最近はロクに食べてないんだよ」


「そんな血色の良い顔で?帰らないんなら武力行使すんぞ」


「「「ご、ごめんなさーい!!」」」


腰のホルスターから改造ボウガンを抜いてクソガキ達に向けると一目散に逃げて行く。



「…なんで冷やかしって分かったんですの?」


「顔色と目を見れば分かる、社会的弱者は常に心のどこかで救いを求めてる目をしてるからな」



言い換えれば現実に疲弊したような幸薄そうな目、なんだけど。



「なるほど…目を見る……」


「俺ぐらいになると人の目を見れば大体何を考えてるか分かるんだよ」


「正確には予想出来る、でしょ?だから村はいつも人と目を合わさないようにしてるんだよね?」


「人の考えなんて知っても面白くないだろ」



どうせ嫌な思いしかしないんならいっその事分からない方が幸せってもんだ。



知らぬが仏、世の中にはそういう事がたくさん山ほど有りマース。



「でも目を合わせない人って対人恐怖症とかコミュ症だと思わない?」


「さあ?目を合わせなくても会話は出来るし…目を合わせないと話せないって人の方が病気じゃね?」


「確かに…目を合わせないと話を聞いてるか分からない、って不安になるのは人間関係の冷たさがそうさせるのかな?」


「普通は独り言でもなんでも近くの知り合いがなんか言ったらとりあえずなんか返すけどな」



流石に知らない人だったら返しようも無いが、目を合わせなくても話は出来る。



「さて、昼飯も食べ終わった事だし…次の場所に移動しますか」



今日だけであと三ヶ所回らないといけないし。



「そだね、もうここらへんの社会的弱者には配り終わったみたいだし」


「早速行きましょう!この街では今もお腹を空かせた子供達が沢山居ますわ!」


「はいよ、さあ乗った乗った……みなさん!世の中には他人のために何か出来ることがある、というのをお忘れなく!」



トレーラーを閉めて拡声器でそう言い残し、次の場所へ向かった。



「ちょい時間が押してるなぁ…速度を上げるか」



一応名目上は視察なため、皇女殿下に街中を見渡させて生活実態を見れるようにしてるが…



予定時間ではそろそろ次の場所に着くハズなのにまだ半分の距離も移動していない。



つーことは…間に合わせるにはスピードを上げるしかない。



そうするとちゃんと街を見渡す事が出来なくなるんだが…仕方ないよな?



「ち、ちょっと!速すぎません!?」


「大丈夫、安全運転だから」



かなり速度が出てるのにトレーラーの積荷を崩さすに馬車を避けるという超高等技術。



異国だったら100%蛇行運転扱いだから飲酒運転と間違えられて即捕まるだろう。

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