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「なあ、さっき言ってた強化外骨格ってなんだ?」


「……覚えてないの?ていとの昔の研究の一つで、着ければ超人的な力が得られるっていうモノ」



俺の質問に辺りを見渡して誰も居ない事を確認して話し出す。



「…そんなんやったっけ?」


「本当に覚えて無いの?『人間の筋肉は1c㎡あたりで5~10kgの力がある、ならそれよりも強靭で細いピアノ線のようなモノを筋肉の代替にしたら物凄い力が出るんじゃないか?』って書いてあったけど…」


「ああ、そういえばそんなんやったかも…」


「サイボーグだかアンドロイドだかホムンクルスだか良く分からないのまで作ったのに忘れるって…」



呆れたようなジト目で見ながらため息を吐かれる。



「サイボーグ?アンドロイド?」


「人間を模したロボットだよ、筋肉、骨はもちろん腱に至るまで全て新素材で造られてたもん」


「新素材ねぇ…ソレが暴走したらやばそうだな」



今は蜘蛛の糸と同じ細さなのに一本で200kgまで支えられるモノがあると聞く。



ソレと同じ物が筋肉と同じように束になって使用されてるんなら…



単純計算で腕力、脚力、握力、背筋力と言った身体能力は人間の約30倍近くにもなるぞ…!


因みに、さっきのショコラの筋力の説明に補足すると…



『筋肉は1c㎡あたり5~10kgの力がある』と言ってたが、ソレにも色々あって…



赤筋の引き出せる力は1c㎡あたり5~6kgが関の山。



白筋が1c㎡あたり10kg…つまりは最大限の力を引き出せるワケだな。



身体能力が高かったり、戦闘の才能がある奴の体はほとんど白筋が占めてたりする。



中には筋肉全部が白筋の『純白筋』とか言う奴もいるらしいが、そいつにはスタミナが無いという重大な欠点が。



力が強い分消耗が激しいという使えなさ。



んでもってココでスレイヤー共の並外れた筋肉について説明しておこう。



つーても明確な名称は無い、俺は『白金筋』と呼んでいるが。



プラチナね、白金。



その白金筋は1c㎡あたり20kgの力があり、引き出せる力は最大限。



んで赤筋+白金のような感じなので力が強い割に消耗が少ない…というかなりの高機能。



それが化け物のような身体能力を誇る要因だ。



「まあスーツって言うか…隙間なく体にぴっちりとくっ付けるからどちらかと言えばタイツに近いかな?」


「なるほど…!タイツに仕込まれた繊維が筋肉のごとく伸び縮みするから装着者の筋肉を補助する形で身体能力が上がるってワケか!」



すげぇハイテクだな!もはや近未来SFみたいになってんじゃん!とテンション上がる俺を見てショコラがなんとも言えないような顔をする。



「自分の研究なのにその反応はどうなの…?」


「ああ、そういやハルトに弟子なんかいたんだな」



おそらくハルトが居るであろうさっきの部屋の前を通ってふと思った事を聞く。



「え?…そりゃいるでしょ、もうイイ歳だし」



急に話題が変わったからかショコラは一瞬何を言ってんの?的な顔をして俺の疑問に答えた。



「イイ歳って…まだ20代前半じゃねえか」


「育てるなら早い方がいいでしょ?私やリザリー、マキナにエリアも弟子はいるよ?」


「マジでぇ!?」



あっけらかんと言われた衝撃の事実に俺は立ち止まって驚く。



ショコラやエリアはともかく…リザリーとマキナにまでいるって事が衝撃やわ!



あの侵略の後から半年以上も一緒に居たのに全然知らんかった…



「今の所まだ弟子がいないのはエルーとていとぐらいじゃない?」


「あ、エルーの奴はまだいないんだ…ってかなんで弟子とってんの?」


「え?だって私達の研究を引き継いで貰わないと…あと志とか?人間いつ死ぬか分からないじゃん?ていとみたいに、さ」



あ~…考え方的には俺のあの拾ってきた子供達的な感じか?



いわば自分のバックアップみたいな?



…バックアップ的な感じで言えばあの子供達とは違うか、俺のバックアップっつったら完全にあのメイド達だし。



まあコイツらの弟子と俺の子供達が一緒だと考えれば……うん、分からなくもないか。



「弟子ねぇ…」


「リザリーとマキナの弟子は可愛いかったよ?私の弟子と同じぐらいだけど」


「マジで!?超見てみてぇ!」



よし!あの研究所に戻ったら紹介してもらおう!



「私の弟子…見たい?」


「まあ、見たくないって言ったら嘘になるけど…今はお前が側に居るから遠慮しとく」



弟子を見て可愛い!とか美人 !とかの反応や名前はなんて言うの?とかナンパ紛いの事をしたら後が怖そうだし。



セリフ的に勘違いされそうだけど…決して口説いてるワケじゃないよ?



「そう?じゃあ今度機会がある時に紹介する」



ショコラも俺の心の内に気付いてたのか特に変わった反応は無かった。



「ココからは決められた人しか入れない仕組みになっていて…」



そう説明しながら境界線のような場所で止まり、門のような形をした機械を弄り始める。



「コレで良しっと…これでていとも入れるよ」



5分ほど機械を弄ったと思えば急に先に進んで手招きをした。



「ふうん?」



なんだこれ?と思いながら機械をくぐるといきなりビー!ビー!と大きな音が鳴り響く。



その大きな音に驚いて一旦止まり辺りを見渡す。



「アレ?間違えちゃった?」


「ちょっ…!」



そしてテヘッと可愛らしく舌を出すショコラの姿を見たかと思えば目の前を凄いスピードで鉄板が通過する。

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