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「こんばんはー、リザリー達は居る?」


「あ、村さん、コンバンハ?えーと…今は第三休憩室に居ると思います」



受付嬢をしてた研究員のお姉さんは片言ながらも日本語で挨拶を返して場所を教えてくれる。



「そ、ども…っと、コレ差し入れね」



俺は飲み物を買うついでに買ってきた大量のお菓子が入った袋を渡した。



「わぁ!わざわざありがとう!」


「いやいや、頑張ってねん」



お礼を言う受付嬢にヒラヒラと手を振ってリザリー達が居るであろう場所に移動する。




「よう、ハロー?」


「あ、程人君おかえり」


「今日は早かったのね」


「お、帰って来たか…どうだった?」



ドアを開けて挨拶するとみんな(いつもの三人)が俺を見るや直ぐに話しかけてきた。



「なんか思ってたよりすっげぇ楽だった、法案の方はどうだ?」


「ああ、上手くいった」



来週から施行されるそうだ、とエルーはA4サイズの紙を差し出す。



ん?なんだこの紙…あ、法案の詳細か。



どれどれ…



超絶滅危惧指定種保護法。



下記の生物を手続き無しでの捕獲や狩りまたは傷を負わす事を禁ず。



ただし下記の生物によって自身の生命が脅かされた場合は例外とする。



この禁止事項を破った場合はこの件に関わった者全てに重罰を与える。



超絶滅危惧指定種



ドラゴン種全般

サーベルタイガー

ガゼルバイソン



他にも確認、認定され次第追加される可能性有り。






…ふーむ色々と小難しい事が書いてあるなぁ。



でもコレでもおそらく簡単に書かれた物で発表される時にはもっと複雑化してるだろうよ。



「重罰ってどれくらいだ?」


「程度にもよるらしいが、最低でも懲役15年または7000万以上の罰金だそうだ」



罰金が7000万…以上?『以下』じゃなくて?



「以下じゃないのか?」


「この前の肉が市場に出回った時の事を覚えてるか?値段が1kgで1000万近くまで上がったアレだ」


「ああ誰かさんが無断で勝手に売り捌いたアレね」



そう言ってリザリーを見るも視線に気付いてるくせに知らん顔で紅茶を飲んでいる。



「あの時の臨時収入って50億ぐらいだったよね?」


「あの時は政府の奴らが税金税金うるさかったな」


「だから早々に研究費用として使ったのよ」


「そんなに必要なのか?」



こいつら一人で年間何十億と稼いでるんだから別に使う必要は無かったんじゃないか?



「ええ、私たちがしてる研究のほとんどは個人的なモノで採算度外視だもの」


「程人君の研究って再現するだけで物凄い費用がかかるんだよ?」


「こんなのを一人でやってたなんて本当に恐ろしい奴だよお前は」


「じゃあやるなよ」



なんで俺が責められてるみたいになってんの?



お前らが勝手にやってる事じゃん…だからそんな目で見んなや。



「とりあえず話を戻すぞ?その前例がある事でドラゴンの価値がおおよそ80億ぐらいになり罰金が最低で7000万以上になったそうだ」



たった80億かよ。



まあ肉だけでその価値があると言うのは喜ばしい事かもしれんが…



素材を合わせたらドラゴンの価値は軽く100億は超えるかもな。



もちろん肉と同じで加工技術にもよるけども。



「?腑に落ちないの?」



表情も雰囲気も何一つ変えてないハズなのに何かを察したマキナが不思議そうに聞いてきた。



「なんで?」


「なんとなくでしょ?付き合いの長さを舐めない方がいいわよ」



どうやらリザリーも俺の内心に気付いてるようだ…恐るべし幼馴染。



「舐めてるワケじゃねぇよ…ドラゴンの価値は素材を合わせたらもっと上がるだろうなーって」


「確かに…今の価値は肉だけだからな…」


「えーと………素材を合わしたら100億は軽く超えるね」



頭の中でどんな計算をしたのか知らんが、俺と同じような考えになっている。

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