3

「そりゃ残念なことで…」


「いつから行くつもり?」


「明日からだけど?」



リザリーが肉を今日持って来たって事は既にドラゴン狩りは始まってると見ていい。



ソレに最低でも一体は狩られてるしな。



コレがこの前のドラゴンじゃない事を祈ろう。



「明日…って早過ぎない?」


「早い方がいいだろ…ってかお前ら食い過ぎ」



今で60本目の串焼きに手を伸ばし、リスのように口いっぱい頬張ってるニーナ達にため息を吐きながら言う。



『ふぁっへほいふぃいんふぁもん』

『ふぉふぇひ…ふぁふぃへぇふぇはひ』



手で口を覆ってるとはいえ、口いっぱいに頬張ってるから発音がおかしくなってやがる。



おそらく…



ニーナ『だって美味しいんだもん』

ユリ『それに…初めてだし』



的な感じかな?



「あんまり食べ過ぎるとトイレが近くなるぞ」


『…ん……トイレ…?』



口の中の物を飲み込んだアニーが不思議そうに聞いてきた。



「消化した後の不純物っつーのかな、とりあえず凄い細かいから尿として余計な水分と一緒に排泄されると思う」


「精霊がトイレするって初めて聞いた」


「普段は…ってか普通は魔力や精気が食べ物だから排泄する不純物が無いんだよ」



神も女神もそうだが…やっぱりこの世界の物を食べると必ず用を足すらしい。



「…良く考えたらなんでこの子達は普通に串焼きを食べてるの?食事は不可能だって言ってたのに…」


「あの剣が依り代じゃなきゃ不可能だろうな」



俺はどんどん減っていく串焼きを重点的に焼く。



んで他のコンロを疎かにしないよう上手く立ち回りつつリザリー達に剣の原理を説明する。



「…と言う事は生物を斬れば魔力を吸い取るの?」


「ソレとはちょっと違う、血や肉を分解してその栄養素を魔力に変えるっつー仕組みだから」


「明らかに普通の剣の…いや、世界の常識をぶっ壊すような理論だぞ」



まあ魔界の植物なんだからこの世界の常識なんて当て嵌まらなくね?



「それにしても食べ過ぎじゃない?」


「串の数を数えたが4体で110本も食べてるぞ」


「一体あたり27本ぐらいとして…良くその見た目で胃袋に入るわね」


「一応人化してるから胃袋の大きさは変えられんじゃね?…それより串のストックがそろそろ底をつきそうなんだが」



500本以上は用意されてたのに…おそるべし精霊の食欲。



つーかコイツらとか他の研究員も食べてるからなんだけどな。



俺もちょいちょいつまみ食いしてるし。



『むぐむぐ………だって創造主が作るのが美味しいんだもん』


『マスター達は毎日食べてるのであろう?ならたまには譲ってくれてもいいではないか』


「譲る譲らないの問題じゃなくて…私たちは生きるために食べてるんだよ?」


「…確かに」



ショコラの言うとおりかもしれない。



嗜好品で趣味として食べてるアイツらと生きるために食べてる俺らとでは意味合いが異なるよなー。



…それから3時間後。



バーベキュー野外パーティ?が終わった。



研究員みんなで片付けをして解散。



さすがに50人もいれば片付けも一時間ぐらいで終わるな。



『ふぁふぅ…食べた食べた…』


『満足』


『人間は毎日こういう幸福感に満たされてるのね』


『そのおかげで我らも存在できてるのだがな』



片付けを終えると4体共満足したように呟く。



「じゃあ私は帰るね~…送ってくれる?」


「おりゃあアッシーか」


「ん~……分かった!ならホッペにチューするよ」



ショコラは言うや否やその場で俺にチューする。



…まだ研究員も半数は残っていて、リザリーや精霊達の居る前で。



しかも口に、直接。

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