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…この惨状を普通と言えるかどうかはかなり微妙な所だし。
マキナの担当したC地点よりもちょっと酷いぐらい。
激しい戦いが起こってたならば普通と言える。
でも普通の惨状よりは少し酷い、って感じの微妙。
「チラホラとエグいのがあるのだけど?」
「前の方から魔術の一端が飛んで来てたんだよ」
「こんなに離れてるのに?」
「お前も見たら納得したって、こんなでっけぇ棘が飛んで来たんだぞ?」
俺は腕を広げてあの棘の大きさを表現した。
「無くはないかもね」
「実際に合ったって言ってんだろ、後でアイツに聞いてみろ」
今は半信半疑の疑いを晴らせないな、と諦める。
「おっ、見えた」
「思ってたよりは近い距離にキャンプを張ってて助かったわ」
「E地点から軽く10kmは離れてるけどな」
「その倍は距離を取ってる予想だったの」
A地点から走る事一時間ちょいで敵?がキャンプを張ってる待機場所に着いた。
「おっと、その変装じゃ危ないかもな…コレを被れ」
俺はパーカーを脱いでリザリーに渡す。
「いいの?」
「フードまで被れよ、汗かいてないから臭くはないハズだ」
リザリーはパーカーに袖を通しフードを被るとおもむろに胸の部分を引っ張って匂いを嗅ぎ始めた。
「すーはー…すー…!」
「…そんな風に嗅がれたらちょっと恥ずかしいんだけど…」
「大丈夫、良い匂いよ…濡れちゃいそうになるぐらいに」
…っ…!そんなうっとりとした顔で…!そのセリフは…はん、そく…だろ…!
不意の一撃に俺のアレが反応してしまう。
敵陣は目と鼻の先なのに何故か俺らは盛り始めるっていう。
南無阿弥陀…!南無阿弥陀…!南無阿…よし!収まったぜ!
なんとか気分を切り替えパーカーの匂いを嗅ぎながら下半身に伸ばそうとしたリザリーの右手を掴む。
「ソレは研究所に戻ってからシてくれ、とりあえず今の目的を思い出そうか」
「…そ、そうね、衣類の匂いを嗅いだのは久しぶりだったからついスイッチが入って…」
手を離すと今度は普通に深呼吸して気分を落ち着かせたようだった。
「もう大丈夫」
「おい、ソコのお前達!何をしてる!」
実はさっき俺がリザリーの手を掴んだぐらいから巡回してた兵士に見つかってたっていう。
なんか終わるまで空気を読んで待っててくれてた。
…良く見ようと徐々に近づいてきてたけどさ。
「あ、すいません…ちょっと司令官的な人に会いに来たんですけど」
「司令官的な…?ああ、将軍の事か、ダメだ!お前らみたいなどこの馬の骨かも分からない奴らを会わせるワケにはいかん!」
ん~、そうなるよなぁ…一応暗殺的な危険もあるわけだし。
無駄にシッカリしてて面倒だ。
「私達はユニオンの者です、その将軍の方にお話をしたくて…」
「!?ゆ、ユニオンのだと!?なぜ…!いや、だが…!」
うーん、コイツは殺しても問題は無さそうだが空気を読めるっていう中々珍しい奴だから生かして置きたい。
普通なら見て気付いた時点で空気を読まずに声をかけるし。
「コレ以上はあまり乱暴な手段は取りなくないの、大人しく通してくれないかしら?」
「そうそう、俺らはただ話をしたいだけなんだからさ」
「……分かった、面会出来るか聞いてやる…」
しばらく悩んだ後に小型無線機を取り出してどこかと連絡を取り始めた。
「…とりあえずついてこい、面会できるかどうかは分からんが」
「マジで?まあ無理にでも面会させてもらうけどな」
「そうね」
歩き始めた兵士の後ろをついていくようにして簡易ベースキャンプの中に入る。
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