23

翌朝、と言うより5時間後の朝。



俺は実家に帰って無名と斧の手入れをした後に朝食を作っていた。



「おはよう…」


「おはよう」



例のごとく?母さんが一番最初に起きてくる。



「あ、朝食作ってくれてるの…?」


「ヒマだったからな…そう言えば、ばあちゃんの遺骨とかある?」


「どうしたの急に?…おじいちゃんの家にあると思うけど」


「あー…じいちゃん家か~…ちょっと一部貰って来てくれね?」



ちょっと考えた後に卵焼きをひっくり返しながら頼む。



「別にいいけど…なんで?」


「ちょいと確かめたい事があって」


「確かめたい事?」


「おはよ~…」



ちょうど良いタイミングで愛梨が起きてきてくれたため、なんやかんやでうやむやになった。



「愛梨、今日は俺が送ろうか?」


「え、いいの?」


「ああ、帰りに買いたい物があるんだよ」


「やったー!今日はゆっくり出られる!」


「程人免許持ってたっけ?」



ベーコンを皿に移してると母さんが聞いてくる。



「いんや?自転車だから問題ないっしょ」


「でもお兄ちゃんが自転車漕ぐと車より速いよね」



この前、チラッと目を開けたらどんどん追い抜いて行ってたし…とパン焼き機にパンをセットしながら言った。



「二人乗りで車より速いってある…?」


「鍛え方が違うからなー、時速80kmぐらいは出てんじゃね?」



こ○亀の主人公も…確か警察の備品の自転車でソレぐらい出してたよな。



もしロードレーサータイプだったら100kmぐらいは出せたりして。



「おはよう…」


「相変わらず起きるの遅ぇな役立たずは」


「なんだと!ソレだけ頑張ってるんだよ!仕事もしないで毎日フラフラと遊び回ってばっかのお前とは違う!」



してやったり…的な顔をしてる役立たずの言葉をシカトしてウインナーを皿に盛る。



「あ、そうだ母さん…ちょっと金くれね?この国の通貨はあまり持ってなくてさ」



この前みたいにいちいち銀行に行って両替する、なんて面倒な事はもう嫌だ。



「別にいいけど、何に使うの?」


「ちょっと買いたい物があるんだよね」


「ダメだ!金が欲しけりゃ自分で働いて稼げ」


「役立たずふぜいがうっせえな…だがまあ一理ある」



俺は調理器具を洗って片付けて母さんの隣に移動する。



そしてポーチから小箱を取り出して床に中身全部出した。



「好きな物やるから金くれね?」



役立たずと母さんは山積みになっている秘宝やらその他の宝を見て呆然とする。



愛梨は一度見た事があったので普通に朝食を食べていた。



「ちょっ…!コレ、どこから…!?」


「外国の某盗賊団を全滅させた時の戦利品、値段がつけられないぐらい高価な国宝ばかりらしい」


「お兄ちゃんの予想では一つ何十億から何百億するんだって~、私もお姉ちゃんも貰ったよ?ほら!」



嬉しいそうに言った後に指に填めてる指輪を母さんに見せる。



「な、何十億何百億!?ソレに盗賊団ってなに!?」


「…!ソレが本当なら愛梨が付けてる指輪一つで俺の今までの稼ぎを軽く超すぞ!?」



俺と愛梨の言葉にパニックになる両親。



母さんはわけわからずに混乱してるだけなのに対し、役立たずは自分のプライドを守る的なアレでの混乱だろう。



「あ、この国ではそこまで価値は無いんじゃねえか?外国だと軽く何百億を超すってだけで」



貴族とかのコレクターなら国の宝物庫に厳重に保管されてるって分かるハズだから、それぐらい出すと思うってだけで…



この国の人達はそんなん知らないんだからせいぜい数十億が関の山だろ。



俺はそこまで金が欲しいワケじゃないから売る気は無いけど。



「そ、そんな物を貰っていいの…?」


「どうぞどうぞ、指輪でも腕輪でもネックレスでもピアスでも…好きなの貰っていいよ」



どうせ母さんや愛梨、藍架には魔力なんてないからただの装飾品にしかならないし。

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