39

「「「!!!?」」」

「「「きゃあああ!!!」」」



ホームに着いた電車のドアが開き俺が降りて数秒後。



男女入り混じった大きな悲鳴がホームに響き渡る。



因みに俺は当然返り血とか浴びてないため、バッグを担いで普通に駅を出た。



「…あれ?」



駅前に出て少し歩き異変に気づく…なぜか家の近くの駅前と街並みが違う。



疑問に思いつつ一旦戻って駅の名前を見る。



…どうやら一駅早く降りてしまったようだ。



はぁ…しゃーねぇ、そのまま藍架の所に行くか。



警察が来て騒ぎになる前に早足で駅を去り人気の無い所を探す。



やべっ…!そういや俺、監視カメラとかに映ってね?



…まあいいか、どうせ調べても死人しか浮かび上がってこないんだ。



ソレにあいつらは忍者だろうから公になる事もあるまいて。



俺は辺りに人気の無い事を確認し壁に手を当てて藍架の場所を探る。



場所を探し当て、影の差した壁をすり抜けるように藍架の近くに影移動した。



「よう藍架」



人気の無い路地に影移動して小箱から斧を取り出し肩に乗せながら藍架の所に歩いて行く。



「やっと来たか…って、え?」



妖怪を斬り裂きながら俺の声を聞き、呟きながら振り返ると何故か不思議そうな顔をした。



「どうしたの?なんか不機嫌そうだけど…」


「あ?分かるのか?」


「だって声のトーンが低めだし、いつもと雰囲気がちょっとだけ違うような感じがする」



ふーむ…良く見てるなぁ、ナイス観察眼。



「ちょっと電車内で愛梨を人質に取られてな…藍架には悪いが、この組織ぶっ潰すから」


「…それ、本気?」



俺の言葉を聞いて藍架の顔つきと雰囲気が変わる。



「本気も本気、ほんきと書いてマジと読む系…邪魔したいなら邪魔してもいいよ?」



首を傾げて言った後に、多分無理だからさ…と呟いて近くの忍者(男)を斧で斜めに斬り裂く。



「「「な…!!?」」」



俺の行動に藍架も含むその場にいた全員が、信じられない物を見たかのように驚愕した。



「俺は言ったハズだぜ!?妹や藍架に手を出したら潰すってよ!!まあ今更謝ろうが遅いけどな!」



「か…!?」

「ぐあっ…!?」

「くそっ…!」



妖怪vs人間、に俺が参入した事で三竦みの状態に変わり優勢だったハズの人間側の分がかなり悪くなった。



人間vs妖怪(俺)vs妖怪。



俺の相手は当然妖怪と忍者(男)だ。



周り全てが敵なんていつもの事で…逆に一対多数の方が遠慮なくやれるんだよね。



俺は混乱に包まれた戦場で斧を振るい忍者(男)と妖怪を斬りまくる。



「貴様ぁ!」


「おお…藍架、相変わらず怒った顔も可愛いね」



斬りかかってきた刀を斧で受け止め、この状況に全くそぐわないオヤジギャグをぶっこむ。



「ついに本性を表したな!」


「あれ、駄洒落はスルー?」


「黙れ!」



どうやら俺の行動に怒ってるらしく言葉遊びには付き合ってくれなかった。



「あっはっは!俺の相手しても妖怪の数は減らないぜ?被害は増えるけどな」


「く…!このクズめ!」


「あー、それ母さんにも言われたわ…やっぱり親子ダナー」



笑いながら藍架の振る刀を斧で受け止める。



人間の屑とか社会の塵とか…何言われても全っ然なんとも思わねぇ。



罵倒されたり貶されたり蔑まれるのは慣れてるし。



ソレに…昔っから貶められたり軽蔑されたり侮蔑されたりとかもされてたんだから今更何も感じない。



…やっぱり俺って心が無いのか…?



ギンギンギンギン鉄同士がぶつかる音を響かせながらも、別の事を考えるだけの余裕があるっていう。



「忍法、火炎!」


「おっと」



藍架が呪文?っつーか技名?を叫んだので斧で受け止めるのをやめて横に飛ぶ。



「くそ…!」


「危ねぇ」



振り下ろされた刀が地面に当たるとソコから凄い勢いで炎が噴き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る