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「あらら…」



またバットが折れてらぁ、随分と脆くないか?



「バットを折ってまでホームランにするだと…!?」


「あと一本しかない…って事はコレで最後?」



芝生に転がってる最後の一本を取って打席に戻り、捕手の人に聞いた。



「…し、潮崎!切り替えろ!最後の一球で打ち取ってやればいいんだ!」



捕手はマスクを取って投手に向かって叫ぶ。



「そ、そうか…そうだよな!終わり良ければ全て良し、だ!」



え、ええー…って事はなに?



コレでホームランを打たなかったら俺の負けって事?



クイズ番組に良くある、最後の問題に限って異様に点数が高い系なやつ?



今まで打ったのは丸っきり意味が無い系?



「いくぞ!」



野郎がついに全力を出したのか今までよりも力強いフォームで球を投げる。



おお、変な縦回転だけど今までより速い。



確か…なんだっけ、あの高速で下に落ちるやつ…まあいいや。



「とう」



結局、カッキーン!と大きな音が響き、球は今までと同じ場所に当たった。



「なあ…!?」


「いくらやってもムダだって…」



球の回転がはっきりと見える上にそこまで速く感じないぐらいの動体視力と、凡人なりに限界まで鍛えて磨き上げられた身体能力があるんだ。



まあ…生きるため、大事な人を守るために鍛えてた俺が…たかがお遊びごときにかまけてる奴に負けるわけないよね。



左手はポケットから出してすらいないぜ?



右腕と右手首、腰の動きだけでしか打ってないのにこのザマ。



つーか…またバット折れてるよ。



木製のバットってダメダメだな、使い物になんねぇ。



「お、俺の渾身の高速縦スライダーが…」


「最後も俺の勝ちー、景品全部+αいただき」



折れたバットをそのまま放置して部屋を出る。



「お兄ちゃん凄い!あの潮崎さんのボールを全部打ち返すなんて!」


「しかも、全部同じ場所を狙ってなんて…」


「ただ打つだけじゃつまらんだろ?だから天井の角っこを狙って打ったんだ」



高速スライダーとか最後の高速縦スライダー?とかは中々難しかったけどな。



「つーわけで景品寄越せ、追加の景品もな」


「つ、追加の景品か…何が欲しい」


「潮崎選手のサインが書かれた本人のユニフォーム!」


「私は田井選手のサイン!」



愛梨と藍架は俺を押しのけておっさんに近づいた。



「潮崎って…そこにいる野郎だよな?今貰えばいいんじゃね?」


「本人の許可が必要でしょ!」


「そんなもんか?じゃあ聞いてやるよ」



再度部屋の中に入り捕手と喋ってる野郎の所に歩く。



「おーい、ちょっと頼みがあるんだが」


「…頼み?」


「うちの妹があんたのサインが書かれたあんたのユニフォームが欲しいって言ってんだけど、貰えない?」


「ユニフォームの一着ぐらい構わないが…そうだな、じゃああげる代わりに俺の質問に答えてくれ」



ダメ元で聞いたら、なんか条件付きでOKしやがった。



「答えられる事ならいいぜ」


「そうか…君はどこの高校だ?」


「はあ?俺は高校なんて行ってねえし、そんな年でもねえよ…多分お前と同じぐらいじゃね?」



高卒でプロ入り4年って言ったらだいたい歳は同じぐらいじゃねえかな…多分。



「え…!?俺と同じ…?と言うか高校行ってないって…」


「質問はそれだけか?」


「いや!あと一つ…いつから野球を始めた?」


「今日、今さっきかな?バット握ったのも今日が初めてだし」



ルールとかは一応知ってはいたけど…まさか実際にやる事になるとはなぁ。



人生どこでどうなるか分かったもんじゃねぇ。



「い、今さっき…バットを握ったばかりぃ!?」


「ありえない…!今さっきバットを握った初心者が潮崎の球を打てるワケがないだろ!嘘を吐くな!」



なんか捕手の野郎が驚いたように食い気味で言ってきた。



「そんな嘘を吐いてどうすんだよ、いいからサッサとユニフォームにサインを書いて寄越せ」



俺は投手の野郎にそう言って藍架達の所に歩いて行く。












































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