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「ちょっと用があったから」
「グリトニルはどうした?あの堅物が良く一人で来る事を許したな」
「アレは言っても聞かない」
「…言わないで来たんかい、きっとあいつ知ったら取り乱して泣き叫ぶぞ」
真面目で堅物のくせに精神的にモロいんだよなー。
いつもは私って言ってるのに取り乱して泣き叫ぶと僕って言うし。
うわあああ!僕はどうしようもない役立たずなんだー!とか大声で叫ぶんだぜ?
「泣き叫ぼうが構わない…決めるのは私、従者ごときに指図されたくない」
「…まあ天界で女神ガイアに仕えるってのはかなり光栄な事だから、仕えたい奴が他にもいるのは分かるけどさ」
要は辞めたきゃ辞めればいい、って事だろ?
あなたの代わりなんていっぱいいるんだから…と。
「私に合わせられない従者は要らない」
「自由すぎるぜ…まあソレは良いんだけど、せめて天界から出る時ぐらいはもうちょっと色々気にしてくれよ」
こんな気軽に一人で来られちゃ調停者達や調停の使者はドキドキだぞ。
「大丈夫、あなたがいる」
「面倒事を押し付けられる身にもなってくれ…」
「それに…ヴィシュヌからちゃんと許可を頂いた、問題ない」
天界の調停者が許可したんなら……うーん、でもなぁ…まあいいか。
「で、何の用だ?」
「報告と感謝を伝えに来た」
「感謝?高潔な女神が下賤な下等生物の俺に?」
「…自分でそう思うのならいい」
女神ガイアは何かを言いかけて、やっぱり止めたようだ。
「感謝と報告だけならわざわざこの世界に降臨しなくても、天界に呼べばいいじゃん」
「それだと誠意が足りない」
「いやいや!天界の上の方に呼び出されるってのもかなり光栄な事だぜ?」
本当に俺の所に来てまで伝える事じゃないって。
凄え怖いんだけど。
例えば…ユニオンの皇帝王が直々に、寂れた公園に住んでるホームレスに感謝の言葉を伝えるためだけに一人で出向く感じ ?
「そう、とりあえず報告から」
「ええー、軽く流された…」
「アテナ、トール、バッカス、ウルカヌスがあの少年に会いたがっている」
「…うーん、女神ガイアからしたらどう?会わせても大丈夫だと思う?」
あいつら昔一人の少年を巡って天界で戦争を起こそうとしてたからな。
表面上…少年の前では仲良くして、水面下でライバルの所に兵を差し向ける。っていう。
「ええ、前よりは落ち着いていると思う」
「はぁ~…条件付きでOKって言っといて」
「条件?」
「俺の出した条件を絶対に守る事」
気に入らないって理由でそこらの建物や人間を壊したり殺したりしたんじゃあ大変だし。
俺みたいにバランスを考えて影響の無いやつだけをヤるんならともかく…
あいつらはプライドが無駄に高い部類の神だから。
調子に乗って色々とバランスを歪めそう。
「伝えておく、あと…バーニアスから謝罪が」
「謝罪?」
「『先日は私の管轄下の神獣グリフォンが粗相されたようで…大変ご迷惑をおかけしました、どうか私に免じて許していただければと』」
「…?…あー、アレね…そんな良くある事をいちいち気にしなくていい。って言っといてくれる?」
「分かった」
なんで位の高い女神が、最底辺に位置する俺に謝罪するの?
意味わからん。
「…アレ?なんで俺がグリフォンと戦ったって分かんの?」
「グリフォンが懺悔したと聞いた」
「懺悔て…バッカじゃねえ」
「報告は以上、次は感謝を伝える」
女神ガイアはソファに座り直し、コホンと咳払いをする。
「先に言っておくが、頭は下げるなよ?」
天界の上位に位置する女神が魔物に頭を下げる姿なんて見たくねえよ。
「…先日は天界の内乱の鎮圧及びルシフェルの身柄を差し出してくれて感謝する」
先手を打たれたからか、女神ガイアはなんか納得のいかないような顔で感謝の意を伝えた。
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