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「それが賢明な判断だな…法を破る奴らを相手に法を守って捕まえられるわけがない」



毒を以て毒を制すってな。



「でもそれじゃ本末転倒じゃない?」


「何を基準に置くかで違うだろ」


「つまり…法を守るのを優先するか、人を守るのを優先するか。って事?」


「人は法を守るが、法は人を守ってはくれないからな」


「まあ一応は人の為に法があるんであって、法の為に人が居るわけじゃねえし」



殺すのはいけない事です!って法があったとしてそれが人を守ると思うか?



人が法を守るから安全になるんであって…



法が人を守るから安全になるんじゃねえよ!



「私はあんたが言いたい事は分かっているけど…だんだん意味が分からなくなってきてるわ」


「そだね、複雑になってきてるね」


「要は人を守るためなら法を守る必要はねえって事だろ?」



子供が誘拐された、誘拐犯の乗ってる車は時速80kmで走行中。



待ってろ!今父さんが助けるぞ!…あ!法定速度は50kmだ!これ以上出したら捕まっちゃうよ~…うわ~子供がどんどん遠ざかっていくー!



法を破ってる奴を相手に法を守ってなんとかしようとしても何にもできん!!



「分かりやすいけどその後が気になるわね」


「時速120kmでかっ飛ばせば追いつくんじゃね?」


「…それで捕まったら面白いのにな」



ウー!ウー!前の車、止まりなさい。繰り返す、前の車止まりなさい!


子供が!子供が誘拐されていて、それを追ってる最中なんです!


それは残念だ、でも法律は守らないとねぇ…例外は認められないんだよ。



的な?この場合無視して誘拐犯追いかけたらどうなるんだろう…



「優先すべきは法or子供どっち?…俺なら絶対子供を優先するけどな」


「「私も」」


「俺も当然子供だな」


「だよな……お、動いた」



4人で法律の重要性について盛り上がってると女の子がヒラリと舞うようにジャンプして屋根に登った。



「あとどれぐらいだ?」


「…おそらくあと1組ね」


「そっか…にしても嬲り殺しっつーか、ずいぶん時間かけて殺したなぁ」


「…サナンカだ、今から言う場所に来てくれ…」



ダルマみたいになってる死体を見下ろしながら呟くとエルーがどこかに電話している。



マキナはすでに死体の所まで降りていて胴体の部分に液体窒素をかけていた。



「うん、内臓器官はまだ使えるかも」


「今手配したから直ぐに来るはずだ」


「メスがあればこの場でも取り出せるんだけどな~」


「この場で取り出してどうするの?病院で保存しておかないと使えないわ」



…使えるかは微妙だよな~…臓器が適合するかどうか分からないし、こいつらが健康体だったかも分からない。



「死体をリユースする事によって臓器のストックを増やすなんて…よく思いついたわね」


「それで何回めだよ…もったいないは世界を救う。ってずいぶん昔に流行った言葉を知ってるか?」


「ソレを人間で思いつくなんて普通じゃないよ…」


「だが合理的ではあるな」



鮮度が落ちる前に液体窒素で素早く保存しないと使い物にならなくなるんだよねぇ。



「おっと、これ以上離されたらマズイな…俺は先行くぞ」



俺は屋根伝いにどこかへ向かってる女の子を追いかけるべく走った。



「エルー、任せたよ!」


「おう、後から行くから見失うなよ!」



女の子を追っている俺の後ろからリザリーとマキナがついてくる。



「中々の身体能力ね」


「今の俺と大差ないかもな」


「コレで最後だといいんだけど…」



マキナはふあ…とあくびをしながら眠そうに目を擦る。



「戻って寝ててもいいんだぜ?」


「えー?ヴァンパイアなんてそう見れる機会がないんだから頑張って起きるよ」


「生産大陸にしか生息しないみたいだしね」



30分ほど走った所で女の子はアパートのような建物に入って行く。



「ギャアアア!!」


「あはははは!!」



数分後、悲鳴が聞こえたと思ったら女の子が笑いながら出てきた。



その女の子の後を追うように一人の男が建物内から出てくる。



「ほーらほら、鬼さんこちら!」


「くそ!ぶっ殺してやる!」


「あはは!出来るものならやってみなさい!」



女の子は屋根の上までジャンプすると裏路地の方に向かった。



「待て!!」



男も女の子を追いかけて路地裏に走って行く。



「ふあぁ…そろそろかな」



5分後、男はもはや人の形を留めてないほどの肉片に変わっていた。



「…もったいないわね」


「よっぽど憎かったんじゃない?」


「これで気が済んだかな?お嬢さん」


「誰!?」



俺は屋根から女の子の隣に降り立つ。



女の子はあからさまに警戒して臨戦態勢を取る。



「あなたは確か…3日前にも会った…」


「おお、覚えてたんだ」


「…私に何の用?」


「用件は忘れてるんかい」



3日前に、親友が心配してるから連れ戻しに来た。って言ったんだけど…



その時の彼女の答えは、どうしても罰を与えなければならない人間がいる。だったな。



だからわざわざ復讐が終わるまで待ってやったのに。



色々手を回して見守ってやったんだから感謝しろよな…とは言えその事は女の子は知らないんだけども。

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